20.50年後の結末
ヤスは、自らに『魔王』の称号が宿ったことで、
ついに「宿敵」の出現を察知した。
彼は、工が地下通路からチュートリアルダンジョンを抜け、
意気揚々と出てくるであろう出口の正面に、静かに鎮座して待っていた。
数時間後。レベル10に到達し、「俺の冒険が始まる!」と浮かれきった顔で地上に這い出してきた工。
その瞬間――。
魔王ヤスの無慈悲な一閃が、
工の首を跳ね飛ばした。
工の体が光の粒子となって霧散し、
神界へと昇っていく。
その輝きを、チーが細い指先でひっ掴んだ。
粒子に導かれるようにして、
ヤスとチーの二人は天高く、
神の領域へと昇り詰めていく。
凍てつく大気圏、そして酸素のない真空の宇宙。
常人なら即死する環境ですら、チーの強大な魔法防御がヤスを平然と生かし続けた。
魔王ヤスにしてみれば、
すべては50年という永きに渡る「熟考と研鑽」の結果に過ぎなかった。
神界で意識を取り戻した僕は、絶叫した。
「え、ええええええっ!? なんで、なんでお前らがここにいるんだよ!」
目の前には、禍々しいオーラを放つ男と、見覚えのない美女。
ヤスは僕を指差し、憎悪を剥き出しにして吠えた。
「貴様か! 『俺Tueee』とやらをするために俺たちの世界を弄んだ、
ふざけた野郎は……ッ!!」
ヤスは僕に殴りかかる。だが、今の僕は肉体を持たない精神体だ。
拳は空しく僕の体をすり抜けていく。
「クソが……。おいチー、こいつを粉砕したい。手伝え!」
秘書のように控えていたチーが、ゆっくりと僕の方へ掌を向ける。
「承知いたしました、マスター」
――チーは、僕が設定したこの世界の『理』そのものだ。
彼女が発動した魔法は、物理的な攻撃ではない。
神である僕の「存在定義」そのものを書き換える、消滅の術式だった。




