2.気づいたら死んでいた
プラネタリウム……?
いや、そんな生易しいものじゃない。
目の前に広がるのは、やけに鮮明で、息を呑むほど美しい宇宙だった。
田舎って、こんなに星が綺麗に見えるものなのか――
……って、いやいやいや。
あれ? なんで僕、倒れてるんだ。
ていうか、ここどこ?
上半身を起こした瞬間、僕は言葉を失った。
宇宙空間にぽつんと浮かぶ、大理石の床。
広さはテニスコート一面ほど。
そして、目の前には――巨大な地球。
「本当に……ここ、どこだよ……」
「おや、起きたようだね」
声のした方へ振り向くと、全身真っ白な男が立っていた。
白髪、白い肌、白い服。白すぎて逆に怖い。
「あの、ここは……?」
「ああ、その前に謝らせてくれ。
ごめんなさい! 君を殺しちゃった、テヘッ」
――は?
脳が理解を拒否したが、どうやら本気らしい。
僕は、これまでの経緯とやらを聞かされた。
「つまり……地球には
『地球上で死んだ神以外の生物は、生き返ることができない』
っていうルールがあって、それが改定されない限り僕は生き返れない、と」
アースと名乗った神は、肩をすくめて言う。
「そう。改定は難しいね。地球のどこかに埋まってる条項のページを
この神界に持って来れば書き換えられるけど……
多分、探すのに五〇〇〇年はかかるよ」
「……じゃあ僕、このまま死んだまま?」
「まさか。それなら君をここへ連れてこないさ」
ひょっとして、これ……巷で流行りの異世界転生ってやつ?
「いや、どちらかといえば『神様製造』かな」
「は?」
「地球のルールはあくまで『神以外の生物』に適用されるもの。
だったら、君が神になれば万事解決じゃないか。
そうすれば地球で元の生活を送れるし、僕も上司の太陽神に怒られずに済む。
まさにウィンウィンだ」
アースが怒られるかどうかはどうでもいい。
問題は――神になるって何だ。
僕は初詣に神社へ行き、結婚式は教会、死んだらお坊さんを呼ぶような、
典型的日本人だぞ。
「じゃあ、わかりやすく見せてあげよう」
アースが指をパチンと鳴らした瞬間、視界が白い霧に包まれた。
「わっ、何これ……!」
「これが、君たちが『魂』や『気』、『フォース』や『魔素』、
あるいは『念』や『霊』と呼んでいるものの正体だよ。
僕たち神は『神素』と呼んでいるけどね」
「えっ、全部同じものなの?」
「性質はね。神素の一粒一粒は、ただの『意志』みたいなもので大したことはできない。
ただ、これには“核”となるものに群がる性質があるんだ」
アースの説明は続く。
受精卵や、思いを込めて彫られた仏像などを核として、
そこに神素が群がり昇華したものが「魂」。
一方、核を持たず、同じ波長の神素同士が結びつき、
集まって意思を持ったものが「神」。
「神素は、魂や神からの命令に従って特殊な力を使える。
君たちの言う魔法や超能力がそれだね。
……もっとも、魔法は地球のルールでガチガチに制限されてるから、
今はほぼ使えないけど」
僕はただ茫然と、白い霧の中に漂う光の粒を見つめるしかなかった。




