1.プロローグ
地球の神・アースは、月の神・ムーンと、今日も暇つぶしの遊びに興じていた。
アース「最近さ、地球の民が面白い遊びしてたんだよ。
『ストラックアウト』っていう、ボールを投げて1~9の的に当てるやつ」
ムーン「へぇ、シンプルだけど奥が深そうね」
アース「だろ? で、ちょっとアレンジしてみたんだ。
名付けて――『隕石ストラックアウト』!
ルールは簡単。太平洋に浮かべた9枚のパネルに、月の石を投げてぶち当てる。
ただし、投げた石は一度、地球をぐるっと一周させてから当てること。……どう? やる?」
ムーン「面白そうじゃない。やってみましょう」
卜口 工、32歳。バツイチの元会社員。
両親が亡くなったのを機に会社を辞め、実家を売却。
某県のダム近く、人里離れた山奥へ移住して三日目の朝だった。
天気が良かったので散歩がてら周囲を歩いていると、古びた小さな神社を見つけた。
工は小銭を投げ入れ、これからの平穏な暮らしを願う。
――その帰り道だった。
アース「……あ、やば」
アースは慌てて地上へ向かうが、間に合わない。
完璧に計算したはずの隕石は、軌道上のデブリ(宇宙ゴミ)に接触し、
進路を容赦なく逸らされた。
――ドゴォォォォン!
爆音が響いた場所には、直径2メートルほどのクレーター。
そして、そこにはかつて人間だったものの残骸が散らばっていた。
「……やっちゃった」
アースは額に手を当てて呟く。
パチン、と指を鳴らす。
「修復」
バラバラの身体は一瞬で元通りになり、血痕すら跡形もなく消えた。
クレーターも消え、原因となった隕石はアースの手元に戻っている。
ただひとつ違うのは――男の身体に「魂」が宿っていないこと。
「はぁ……。地上のルールじゃ、一度死んだら生き返らせられないんだよなぁ……」
アースは深く溜息をつく。
仕方なく、死んだ男の身体と、そこからこぼれ落ちた魂を拾い上げ、
神界へと連れ帰ることにした。




