16.対人戦
相手も剣を抜いた。ぶっちゃけ、こちらは初心者だ。
相手が『初心者の洞窟』の常連なら、
レベル10程度には達しているかもしれない。
いずれにせよ格上との対峙だ。
普通なら圧倒的なレベル差でお話にならない状況だが……。
僕は最初の小屋で、ある魔法を創造していた。
レベル差10程度なら簡単にひっくり返す、一発逆転の必殺魔法。
発射した者にしか見えない『無属性の魔力弾』だ。
当たれば10秒間、相手を硬直させる実戦重視の切り札である。
1回の発動で20ヒロードを消費するが、
見えない弾丸は回避不能。
当たれば止まる。
止まれば勝つ。
間違いない。
僕は剣を上段に構え、その姿勢のまま、胸元から無属性弾を発射した。
「――!」
弾丸が男に命中する。
よし、動きが止まった。
一気に距離を詰める。勝った……喰らえ!
ガキーンッ!
「……なっ!?」
剣と剣が交わる硬い音。横から、もう一人の男が割り込んできたのだ。
まさか、仲間がいたなんて。
焦った瞬間に、死角から鋭い斬撃が走った。
スパッ、ズバッ――!
「あ、あぁ……ッ!?」
僕の両腕が、地面に転がった。
「おうおう、いい身なりしてんじゃねぇか。全部剥ぐぞ」
「おい、何だこの本。随分と立派だが、
中身は変な記号ばかりで真っ白だぞ。
まあ、メモ帳にでもなるか。
お、この腕輪も格好いいな。
剣ももらっておくぜ。……残りは、お前にやるよ」
朦朧とする意識の中、僕はすべてを奪われたことを悟った。
両腕からの止まらない出血。視界が急速に狭まっていく。
デッドエンド。
「ちっくしょー……!」
神界に戻った僕は、地団駄を踏んだ。
回復魔法といえば「患部に手を当てて唱える」のが定石だが、
腕を切り落とされたら手を当てることすらできないじゃないか。
僕はすぐさま、新たな基本魔法を構築した。
【自己回復魔法:マイヒール】
詠唱:マイヒール
効果:自分自身にのみ発動。
残ヒロードの半分を消費し、
その量に応じた負傷の治療を行う。
「よし、これで『手を当てられない状況』でもなんとかなるはずだ」
それにしても、まさかチュートリアルダンジョンが誰かの縄張りになっているとはな。
僕はノートを広げ、小屋の地下に新たな構造を書き加えた。
「……小屋から直接、地下通路でダンジョンへ繋いでやる。
ダンジョン側からは見えない隠し扉にしておけば、
外のならず者と顔を合わせずに済むはずだ」
これで心置きなく、チュートリアルダンジョンを攻略できる。
僕は執念にも似た意気込みで、再びテストプレイへ向かった。




