15.チュートリアルルーム
根本的に、僕は弱すぎる。
ノートに書き込むには時間が必要だ。
怪しい余所者だと思われている現状では、その「猶予」すら与えられない。
僕はスタート地点を修正した。
誰も入って来られない頑丈な小屋を作り、
その中に転移させる。ここなら誰にも邪魔されず、
落ち着いて現状確認ができるはずだ。
さらに、即死を防ぐためにレベルアップの場も用意した。
小屋から10メートルほどの場所に、初心者専用の低レベルダンジョンを設置。
加えて、初期装備として「翻訳の腕輪」と「魔法書」を支給することにした。
『翻訳の腕輪』:あらゆる言語を理解し、読み書きを可能にする。
『工の星の魔法書』:全6属性の魔法と、
必要な「ヒロード」が記載されたガイドブック。
魔法書は星の民に読まれると厄介なので、
日本語表記かつ「小屋から持ち出し不可」というプロテクトをかけた。完璧だ。
あとは、隕石騒動の警戒心を解くため、世界の時間を5年ほど経過させる。
「よし……今度こそ、ゆっくりテストプレイを始めるとしよう」
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卜口 工、32歳。バツイチ、元会社員。
気がつくと、僕は見知らぬ小屋の中にいた。
どこから入ってきたのかは不明だが、
ここが異世界だというなら些細なことだ。
僕は手元のノートを読み、現状を把握する。
「……なるほど。まずは装備と魔法の確認か」
小屋にあった剣を帯び、魔法書を読み耽る。
どうやら僕は全6属性の適性があるらしい。
杖がなくても火球程度なら放てるようになった。
腕輪も装着する。
ノートには『絶対に外すな』としつこいほど注意書きがあった。
過去に何かあったんだろうか?
準備を整え、僕は小屋の扉を押し開けた。
「へー……ここが異世界か」
目の前には深い森。そしてすぐ脇に、手頃な洞窟を見つけた。
ノートによれば、あそこは『初心者の洞窟』。
レベルアップに最適な場所らしい。
「よっぽど僕の前に来た奴らが弱かったんだろうな。
わざわざこんな場所まで用意してあるなんて」
僕は鼻歌まじりに洞窟へ向かった。
――が、その入り口を跨ごうとした、その時。
「おうおうおう! おめぇ、誰の許可を得てこの穴に入ろうとしてんだ、あぁ!?」
岩影から、見るからに質の悪そうな男たちが現れた。
僕「えっ……? 許可なんて必要なんですか?」
「当たり前だろ! ここは俺たちの稼ぎ場なんだよ!」
ブンッ! と、男の一人が容赦なく剣を振り下ろしてきた。
魔物と戦う覚悟はしてきた。だが、人間と殺し合う覚悟なんて、今の僕には――。
「……っ!」
僕は反射的に腰の剣を引き抜いた。
チュートリアルは、いつの間にか実戦(対人戦)へと変貌していた。




