12.始まりの村
さて、神である僕は、
始まりの村へのルートも完璧に設計している。
記憶を失った僕がどう動くか。
人間の行動心理を逆手に取った、
最高の「誘導」を施してあるのだ。
まず、僕なら真っ先にノートで村の位置を調べるだろう。
だが、もしパニックでノートの存在を失念していたとしても、
対策は済んでいる。
僕は知識として知っている。
山で迷った際、闇雲に下ると目的地を見失い、
遭難に拍車をかける。対して山頂を目指せば、
視界が開けて街の明かりや煙が見つけやすくなる。
つまり、僕なら「まずは高い場所へ」と登るはずなのだ。
さらに、人間は無意識に歩くと左へ、
つまり反時計回りに進む癖があることも計算に入れている。
「したがって、この地点に降り立った僕は、左方向に山を登り、
二〇分後には村に到着するはずだ……!」
よし、やってみよう。
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卜口 工、32歳。バツイチ、元会社員。
異世界に召喚されてしまった僕は今、
チートノートと「火球の杖」を手に途方に暮れている。
杖を見ると、丁寧にも張り紙がしてあった。
『ファイアボールの魔法陣。持っている間、
少しずつ魔力を吸い取って貯金するよ。最大6発分。
使い切ると、本人の魔力を直接吸い取って発射するから気をつけて! By 神』
「なるほど、燃費と残弾を考えろってことか」
とりあえず、使い方はわかった。問題は「どこへ行くか」だ。
方角はさっぱりだが、目の前には大きな川が流れている。
日本なら一級河川と呼びたくなるような堂々たる川だ。
「川があるなら、答えは一つだな。下流を目指そう」
これだけ大きな川なら、必ずどこかで生活用水として利用されているはずだ。
川沿いに下っていけば、そう遠くないうちに街や村にぶつかるのが文明社会の理屈である。
僕は川を下り始めた。……が、なかなかつかない。
そのまま歩き続け、体感で二時間が過ぎた頃だった。
「……あ、橋があるぞ!」
立派な石造りの橋を見つけ、僕は喜んでそれを渡った。
だが。
『大きな橋を渡ると、敵のランクが一段階上がる』
という王道RPGの基本を、
僕は身をもって知ることになった。
――残念ながら、デッドエンド。




