10.テスト3回目、4回目
(テスト3回目)
赤い球体が消え、視界が開ける。
深い森、角ウサギの出待ち。
「えっ、やば、いきなり戦闘かよ!」
僕は背負っていた巨大な長剣を引き抜こうとする。
……が、重い! なんだこれ、
完全に両手持ちの剣じゃないか。
左脇にはチートノートを抱えている。
このままじゃ剣を振ることすらままならない。
僕は仕方なく、ノートを地面に放り出し、両手で柄を握りしめた。
正直、心臓はバクバクだ。魚一匹さばいたことのない人間に、
いきなり化け物を斬れなんて無理ゲーだろう。
「普通、ファイアボールとかの魔法を一撃……とかじゃないのかよ。
何で神様は、こんな重い剣をチョイスしたんだ!」
まあ、自分が神様なら「大剣、カッコいいじゃん」とか思いそうな気もするが。
逡巡している暇はなかった。ウサギが猛然と突進してくる。
僕はヤケクソで、カウンターの突きを一閃――!
と思ったら、ウサギは空中で器用に横っ飛びしやがった。
突き出した姿勢のまま、がら空きになった僕の土手っ腹に、鋭い角が突き刺さる。
(テスト4回目)
赤い球体が消え、視界が開ける。
深い森、角ウサギの出待ち。
僕は、右手に持っている「杖」に、
ベタベタと貼り付けられた紙に目が留まった。
『「ファイアボール」と叫べば火球が出るよ。 By 神より』
――神様、必死かよ。
僕は祈るような気持ちで叫んだ。
「ファイアボール!」
バシュッ! と勢いよく放たれた火球が、巨大ウサギに直撃する。
哀れ、ウサギは断末魔を上げる暇もなく、真っ黒焦げに燃え尽きた。
「……ふぅ、危なかった」
この世界で始めての魔物と戦いそして勝利した。
辺りを見回すが、ピコンと音が鳴ることもなければ、
レベルアップの予兆もない。
「ステータス・オープン!」
なんとなく叫んでみたが、何も起きない。
「……。まあ、これが現実なんだろうな」
ゲームじゃないんだ、ステータス画面なんて便利なものは出ないらしい。
だが、僕は足元に落ちていたノートを拾い上げ、中身を確認することにした。
なぜだろう。初めて来た場所で、初めての体験をしているはずなのに。
「ようやく少しだけ、先に進めた気がする」
……。
まあ、気のせいだろうけど。




