第73話 勇者は国王と対面する
国王の登場で僕は事態を察する。
僕達は待ち伏せされていたのだろう。
向こうはこちらの動向を把握していた。
きっとどこかで先回りしたに違いない。
盗賊団を殺したのは黒衣の集団で間違いない。
国王の側近のような立ち位置に見えるが、もしかすると近衛部隊ではないだろうか。
それならば、常軌を逸した雰囲気もまだ納得できる。
ただし、瘴気を漂わせる理由は未だ不明だ。
何らかの術を使っているのかもしれない。
僕は剣を持つ手に力を込める。
沈黙を経て、喉から声を絞り出した。
「国王……」
「久しぶりではないか、墓守よ」
微笑する国王は余裕を崩さない。
殺伐とした空気を感じないかのように振る舞っている。
彼は僕の力を知っているはずだ。
一瞬で距離を詰めて、首を刈ることだってできる。
たとえ近衛部隊がいようと関係ない。
さらにはエマとマリーに加えてネネもいた。
戦力差としては圧倒的だろう。
戦いが始まれば、きっと一瞬で決着する。
それなのに欠片の動揺も見せない。
待ち伏せしていたという点を鑑みて、自信を保てるだけの策があるのか。
不用意に接近するのは悪手だ。
ここは様子を見た方がいいだろう。
僕の内心をよそに、国王は不思議そうに髭を撫でる。
「貴様がなぜここにいる? あの地の管理を命じたはずだが」
「どうだっていいだろう」
僕は国王の問いを一蹴すると、焼け落ちた建物を剣先で指し示した。
死体の悪臭がぶり返したように漂ってくる。
「どうして盗賊団を殺したんだ」
「おかしなことを言う。無秩序な犯罪組織を取り締まるのは、一国の王として当然だと思うが」
「とぼけるな。ずっと前から癒着していただろう」
僕は重ねて追及した。
対する国王はため息を洩らす。
彼は蔑んだ眼差しを建物へと向けた。
「盗賊団については、厄介に感じていた。野心が大きすぎる。そろそろ駆除せねばならぬと考えていた」
国王は手を伸ばして、開いた指を一気に閉じた。
冷徹な双眸に嗜虐心が宿る。
「そして実行した。死園という餌で戦力を分散させて、その隙を突いた。思ったより呆気なかったがな」
国王が腕を下ろす。
その間も黒衣の集団は微塵も動かない。
ただ人形のように国王のそばに並んでいた。
悪意を彩られた目だけが、僕達を捉え続けている。




