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元勇者の墓守は理想の死園を築き上げる  作者: 結城 からく


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第72話 勇者は襲撃者と対峙する

 黒衣の集団は計六人いた。

 入念に容姿を隠しており、背丈の他に特徴がない。

 性別すら判然としなかった。

 ただ六人分の双眸がこちらを凝視している。


「…………」


 僕は無言で身構える。

 強化魔術をいつでも発動できるように意識した。

 全身の魔力を循環させて、思考を殺し合いのものへと切り替える。


 黒衣の集団は相当な手練れのようだった。

 纏う風格が常人のそれではない。

 加えて全身から瘴気を漂わせている。

 まるで魔物と対峙しているような感覚だ。

 どういうことか分からないが、警戒するに越したことはない。


 エマとマリーはそれぞれ防御魔術を追加していた。

 守りを堅牢にして戦いに備えている。

 この場においては適切な判断だろう。

 相手がどのような攻撃を仕掛けてくるかは不明だ。

 とにかく死なないことを優先した方がいい。


 二人は決して足手まといではない。

 実戦を経て魔術の使い方を学んでいる。

 相手は格上だが、きっと活躍してくれるだろう。

 黒衣の集団を注視する二人の戦意は、ただ守られるだけの存在でないことを示唆している。


 ネネは悠然と立っていた。

 無防備なように見えるが、きっと複数の呪術を用意しているはずだ。

 裏で策を講じているのだと思う。


 能力的な相性から僕には敵わないが、ネネは恐るべき力を持つ魔女である。

 気を抜くと痛い目に遭う。    

 味方としてはこの上なく心強い存在だった。


 僕達は互いに睨み合う。

 一触即発の空気が続いた。

 どちらからも仕掛けることなく、微妙な間合いで動かずにいる。


 相手の出方を窺っている状態だった。

 このままでは埒が明かない。

 そう考えた僕は、剣を引き抜きながら告げる。


「僕達は盗賊ではない。無駄な争いはやめないか」


 これは本音だ。

 もっとも、相手が素直に従うとは微塵も思っていない。


 黒衣の集団は盗賊団を壊滅させた。

 その上で僕達のことも殺すつもりだろう。

 確証はないが、きっと彼らはこちらの素性を知っている。

 理由が不明ではあるものの、彼らの標的となっているようだ。


 黒衣の集団は、僕の言葉に反応を見せない。

 ただ静かに並んで立っていた。

 研ぎ澄まされた殺気だけが張り詰めていく。

 今にも襲いかかってきそうだった。


(やるしかないか……)


 そう決意した時、黒衣の集団の背後で動きがあった。

 彼らは瞬時に道を開ける。

 茂みの奥で闇が蠢み、人影が出現した。

 そこから歩み出てきた人物を見て、僕は驚愕する。


(あれは――)


 上等な衣服に真紅のマント。

 灰色の髭が僅かに揺れる。

 濁った青い瞳が、老獪な色を見せる。

 鷹揚とした態度で登場したのは、この国の王であった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 黒衣の襲撃者どもを主人公にけしかけた黒幕はやはり国王? そうだとして、主人公に >濁った青い瞳が、老獪な色を見せる。 と評される様な、老獪そうな人物が わざわざ主人公の前に出てきた理…
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