第68話 勇者は不審に思う
翌日以降、僕達は盗賊団の本拠地を目指して進む。
立ちはだかる王国軍を変わらず撃破していった。
ただ、戦闘の頻度はだんだんと減りつつあった。
兵士達、連日の壊滅を聞いている。
戦力提供をする貴族達が渋っているのだろう。
全体的な士気も下がっており、僕達を目にした途端に逃亡する者も珍しくなかった。
彼らも一枚岩ではない。
あまりに状況が悪化すれば、連携もままならなくなる。
僕達からすれば好都合だった。
時間をかけすぎると面倒だ。
なるべく早い段階で盗賊団と接触したかった。
そのまま王都に仕掛けたい。
様々な悩みが今も僕の中で渦巻いていた。
数日の間に心境は変化したものの、それを表に出すことはない。
ネネは何か察しているようだが、あれから彼女は奔放な性格のままだった。
真面目な姿を見せず、普段通りに行動している。
きっとあえて何も言わないだけで、僕の葛藤を看破しているのだろう。
裏では楽しんでいるのかもしれない。
それから僕達は、王都付近に辿り着いた。
以降は街道を外れて山岳地帯へと向かう。
この奥地に盗賊団の本拠地があるのだ。
王国軍もさすがにこの辺りにはいない。
今頃は王都の警備を厳重にしているのではないだろうか。
そうやって僕を待ち構えているのではないかと思う。
代わりにここからは、盗賊達との遭遇に注意しなければならない。
既に盗賊団の縄張りに侵入している。
おそらく道中で向こうから奇襲をかけられることになるはずだ。
きっと報復に来たのだと勘違いされている。
下手に隠れて移動すると誤解を与えるため、僕達は堂々と移動を続けた。
こちらには元幹部のネネがいる。
何か事情が異なると察してくれるのを祈るしかない。
盗賊団と協力したい以上、なるべく戦いには発展させたくなかった。
(ん……?)
しばらく獣道を進んでいくと、僕は異変に気付いた。
血の臭いがする。
どうやら進行方向から漂ってくるようだった。
気のせいではない。
僕は他の三人と顔を見合わせる。
エマとマリーは首を傾げていた。
いつもは笑っているネネも、飄々とした雰囲気を消している。
彼女は杖を振ると、何らかの魔術を発動した。
「死体が落ちているようね。見に行きましょう」
探査系の魔術を使ったらしい。
ネネは早足で僕達を先導する。
獣道の脇を進み、茂みを踏み越えて歩く。
ほどなくしてネネが足を止めた。
彼女はすぐそばの地面を指差す。
そこには、折り重なった死体が隠されていた。




