第60話 勇者は進展を望む
二日後の早朝。
僕は村の入口にいた。
外套を纏い、腰には剣と鉈を一本ずつ吊るしている。
水や食料を入れた背嚢も装着していた。
少し離れたところには、レナや盗賊達がいる。
これから僕は、王都付近にある盗賊団の本拠地に行こうと思う。
そこで彼らと手を結びたい。
何度かの戦闘を経て、向こうに少なくない損害を与えた。
しかし、彼らはきっと報復を諦めない。
本隊が壊滅したと知れば、さらなる策を用意してくるはずだ。
これについてはレナも同じ見解だった。
潔く降参するのなら、国内最大の犯罪組織にはなり得ない。
並外れた執念があるからこそ、その悪名を轟かせられるのだ。
とは言え、盗賊団との敵対は基本的に不利益しか生まない。
散発的に襲撃されると、村の運営に支障が出てしまう。
人材は確保できたが、これ以上は不要だ。
あまりに人口が急上昇すると、運営が回らなくなってしまう。
だから、その前に先手を打つ。
こちらから盗賊団に接触して、今後の衝突を避けるのだ。
不規則に延々と襲撃されるよりはずっと楽である。
本拠地に乗り込んで彼らを殲滅するのが手っ取り早いが、そのやり方は採用しない。
今回は状況を利用した策略を敷いていこうと思う。
すなわち盗賊団と手を結び、王国との争いを終息させたい。
王国と死園と盗賊団。
現在はこの三勢力が入り乱れて争っていた。
より正確に言うなら、王国が水面下で動いて優位に立っている。
死園と盗賊団を衝突させて、両者の消耗を強いていた。
僕はこの手法を真似したい。
王国を共通の敵に仕立て上げて、盗賊団と協力するのだ。
盗賊団も国には嘘の情報を掴まされている。
結果として無視できない規模の損害が生じていた。
多少なりとも恨みはあるはずだ。
こちらから提案すれば、僕達との協力も視野に入れるのではないかと思う。
諸悪の根源は、国王や大臣といった面々だ。
まずは彼らを殺害して、首都の機能を麻痺させる。
そして王国が死園に干渉しないように脅しをかける。
早い話がこの地の独立を認めさせるのだ。
王国も素直には従わないと思うので、その時は暴力に訴えるしかない。
いずれも取り返しの付かない行為であった。
しかし、そのような考えは今更だ。
僕は血みどろの道を選んだ。
無気力な日々を捨てて、墓守の勇者として立ち上がったのである。
どれだけ手を汚してでも、突き進むしかなかった。
盗賊団の本拠地に向かうのは、僕とエマとマリー、それに幹部の少女こと魔術師ネネだ。
他の者には死園に残ってもらう。
レナや盗賊達に留守を任せるのは、正直かなり不安が残る。
最悪、乗っ取られている恐れもあった。
その時はその時だ。
エマとマリーを置いていくと、人質にされるかもしれない。
加えて盗賊団との交渉は他の者に任せられない。
様々な可能性を考えた結果、この組み合わせになったのだった。
「心配せずとも何もしないさ。安心していいよ」
レナは朗々と言いながら僕の肩を叩く。
相変わらず馴れ馴れしい。
ネネとのやり取りについて言及したところ、レナはあっさりと認めた。
特に悪びれることもなく、こうして平然としている。
その態度が余計に信用ならない。
きっと彼女はわざとやっているのだろう。
何のつもりかは知らないが、もう少し真面目にしてほしいものだ。




