第34話 勇者は傭兵の真意を聞く
僕は返す言葉に迷う。
乗り気なレナについていけなかった。
彼女の真意はやはり読めない。
どこまでが冗談で、どこまでが本気なのか。
基本的に何を考えているか分からない人物だが、今回は本当に謎だった。
こうして同行しながらも、未だに敵か味方か判断が付かない。
殺そうにも何か策がある気がして、躊躇してしまう。
底知れない人物だ。
様々な考えを抱きながらも、僕は何とか話に応じる。
「僕と手を組みたいだって?」
「そう! 君となら上手くやれる……いや、君だからこそ協力したいんだ!」
レナが嬉しそうにこちらの手を握ってきたので、なんとか引き剥がす。
それでも彼女は特に気を悪くした様子はない。
むしろ生き生きとした顔をしていた。
鼻歌を奏でるレナは、馬車にもたれながら語る。
「私の目的は、好き放題に大儲けしながら戦うことさ。それは知っているだろう?」
「ああ、もちろんだ」
レナはとにかく金で動く英雄である。
各国に様々な英雄がいるが、彼女ほど金に執着する者は珍しい。
その気質から"守銭奴の傭兵"という異名を付けられるほどだ。
とは言え、レナには金額相応の働きが期待できる。
さらに仕事内容も選ばないため、要所で重宝されていた。
悪党からの需要も高いと聞いている。
レナは再び馬車の上に飛び乗った。
彼女はマリーと肩を組むと、脚を組んで僕を見下ろしてくる。
「君と手を組みたいのも、その一環だね。そろそろ傭兵にも飽きてきたし、どこかに腰を落ち着けるのも悪くない」
意外な発言だった。
レナはどこにも所属しない主義のはずだ。
契約によっては短期でどこかの騎士になることもあるが、いくら金を積んでも長居しないらしい。
そんな彼女が腰を落ち着けると言っている。
すなわち、僕との協力関係を維持したいということだ。
ますます意味が分からない。
「僕は金稼ぎをするつもりはない」
「知っているとも。しかし、いずれ君の周りでは大金が動くことになる。なぜだか分かるかい?」
レナは教師のような口調で尋ねてきた。
僕は思考を進めて、いくつもの可能性を予想する。
この先、あの村で発生するであろう出来事を考えた。
そして単純明快な答えに辿り着く。
「――戦争か」
「その通り! 戦争ほど天井知らずに儲けられる仕事はない。しかも楽しいのだから止められないね」
レナはここぞとばかりに指を鳴らした。
その双眸に嗜虐心を湛えながら、彼女は声音を落として呟く。
「今後、君は数え切れないほどの戦いを経験することになる。その上で生じる利益を、ほんの少しばかり分けてほしいんだ」




