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バベルの免罪符  作者: やばくない奴
伝染病
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宇宙からの贈り物

 翌日、とある平凡な中学校の昼休み。教室では、二人の少女が昼食を食べながら話し合っている。一人は中性的な容姿、もう一人はいかにも女性らしい容姿をしている。


 この日は、学校中が撃墜された宇宙船の話題で持ちきりだ。無論、彼女たちもまた同じニュースを話題にしているようだ。

由奈(ゆな)って今朝のニュース見た? 宇宙船が宇宙人の基地らしきものに撃ち落とされたって奴」

「あ! あのニュース、風音(かざね)も見たんだ! あの映像、本当に衝撃的だったよね」

 あの出来事が印象に残ってしまうのも無理はない。何しろ、長らく近代的な人工物の見つからなかった宇宙からは機械の要塞のようなものが見つかり、それが宇宙開発チームの科学力では太刀打ちの出来ない攻撃力を持っていたのだから。二人はこの事例に対し、得体の知れない神秘を感じていた。


 中性的な少女は相良風音(さがらかざね)。彼女は男勝りで正義感の強い女子中学生だ。もう一人は、彼女の友人の鈴木由奈(すずきゆな)。こちらはどこにでもいる普通の少女である。二人は無二の友人同士であり、第三者の介入する隙をまるで感じさせない。休み時間になると、彼女たちは必ず一緒になるのだ。


 二人は各々の見解を述べる。

「船員の命が助からねぇのは残念だけど、宇宙開発の観点から見れば無駄な犠牲ってわけでもなさそうだな」

「次の調査では、あの人工物のある場所に宇宙探索用のドローンでも送り込むのかな。また有人の宇宙船が撃ち落とされたら大変だし……」

「あるいは、あのレーザービームみたいな光線を避けられるような凄腕のパイロットでも連れていくとか……」

「それは流石に無理だよ。現代技術ではまだ、光速を超えることは出来ないもの。パイロットの腕がどんなに良くても、宇宙船の性能が足りないよ」

 どうやら、風音よりも由奈の方がやや見識が高いらしい。両者はともに同じ学校に通っているものの、由奈の方が教養はあるようだ。


 二人は昼食を食べ終え、チャイムの音が鳴るまで雑談した。



 ***



 地上に災いが降りかかったのは、後日のことだ。


 世界のあちこちに、成人男性並みの大きさをした楕円形のカプセルが投下された。カプセルからは未知の細菌のようなものが噴出され、感染者は自我の崩壊した化け物へと姿を変えていった。この危険な物質の正体は不明だが、それが空気感染する代物であることだけは確かだ。


 現場には、すぐに防護服を着た取材班やカメラマンが駆け付けた。しかし、彼らはすぐに感染者の餌食となった。

「正体不明の隕石がっ……ぐわあああああ!」

「謎の物体の正体について、我々……」

「まるで地獄のような光景です! 我々は悪夢を見てい……ぐはあっ」

 ある者は豪腕に突き飛ばされ、ある者は片腕を屠られ、またある者は首をはねられた。カメラの回る中、傷口から未知の物質が侵入した取材班とカメラマンは、次々と化け物に姿を変えていく。感染を逃れた者は、感染者の一撃で命を失った者だけだ。この一部始終は日本中で放送された。他国でも、彼らと同じように生放送中に死亡する取材班が後を絶たなかったという。



 カプセルの落とされた地域はすぐに立ち入り禁止になったものの、化け物と化した感染者が移動するにつれて感染地域の規模は拡大していった。



 その日の昼休み、由奈と風音は朝の生放送について語り合った。

「あの隕石からまき散らされたって奴、菌か毒かも定かではないんだってね。多分、これからネズミやモルモットにアレが打たれて血清が作られるんじゃないかな」

「そうなると良いな。大切な人がある日突然化け物になったら、どうすれば良いのかオレにはわからねぇからな……」

「大切な人って誰? もしかして、私のこと?」

 そう尋ねつつ、由奈はにやにやと笑っていた。風音は少し頬を赤らめ、指先で後ろ髪を掻きながらこう答えた。

「お、おう。まあ、お前も大切なダチだと思ってるよ」

 彼女は少年のようななりと喋り方をしているが、由奈よりもはるかに照れ屋だ。由奈はそんな彼女をからかうことが好きである。

「風音、照れてる」

「うるせぇよ」

 風音はわざと無愛想な雰囲気を醸し、頬杖をつきながら窓の外に目を遣った。

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

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