機械仕掛けの城
時は未来――――一隻の大きな宇宙船は、太陽系から遠く離れた未開の銀河を航海していた。前代未聞の遠征に、船員たちは興奮を隠しきれない。
「しかし、宇宙開発もだいぶ進んできたな」
「ああ、そうだな」
「地球からこんなにも離れた天体が目の前にあるなんて、まるで夢のようだよ」
宇宙船の窓から景色を眺めつつ、彼らは技術の進歩に感動していた。船員たちは皆成人だったが、まるで子供のように嬉々とした笑みを浮かべていた。
そんな中、彼らのうちの一人は、ひときわ異彩を放つ何かを発見した。
「お……おい。あれは一体……」
彼が指を向けた方に浮かんでいたものは、機械仕掛けの要塞のような外見をした物体だった。船員たちには、それがどんなものであるか想像もつかなかった。風変わりな外見をしているそれは、少なくとも天体の一種ではなかった。
この未知の物体についてわかることはただ一つ――――それが明らかな人工物の見た目をしていることだけだ。
船員たちはこの人工物に関心を抱かずにはいられなかった。
「こんな宇宙の果てに、先客がいたのか?」
「地球からはうんと遠く離れているし、人工衛星や宇宙ステーションではないよな?」
「もしかしたら、この周辺に地球外生命体が住んでいるのかも知れないな。近づいてみよう!」
「賛成だ」
「地球に大きな手柄を持ち帰れそうだな」
彼らの総意により、宇宙船はすぐに機械の要塞へと距離を詰めた。しかし、好奇心とは時に猫を殺すものだ。
突如、機械の要塞から大砲のようなものが姿を現し、巨大なレーザーのような光線で宇宙船を撃墜した。
ほんの一瞬の出来事だった。船員たちの希望を乗せた宇宙船は、あっけなく宇宙の塵と化した。希望を抱いて探索を試みた船員たちは、絶望する間もなく全滅した。しかし、要塞の反撃はこんなものでは終わらない。それはまるで、蜂の大群が一斉に飛び出してくる蜂の巣のごとく、大量のカプセルを排出した。その一つ一つの大きさは、おおよそ成人男性一人分くらいである。カプセルは何らかの動力を持っているのか、まっすぐな列を成して地球へと向かっていく。そのスピードは、まるで意志を持った弾丸のようでもあった。
しかし、現時点ではこのカプセルの存在を認知している者はいない。NASAに送られた映像は、宇宙船が光線を浴びた時点で途切れている。
***
船員たちの不可解な死の一部始終は、すぐに世界中で報じられた。この件について、様々な分野の専門家が見解を述べたが、いずれも憶測の域を出ないものだった。
「私にわかることはほとんど何もない。だが、あの要塞からは明確な攻撃の意志を感じられた」
「あの物体が実は自然物である可能性もゼロとは言えない。合理にかなった形状を持った個体は自然界を生き抜きやすく、このような性質が進化の末に洗練されることは何も珍しくない。例えば、昆虫の複眼や亀の甲羅は幾何学的なハニカム構造を成している」
「自然物がレーザービームのようなもので宇宙船を焼き払うとは思えませんね」
「世の中には尻から熱湯を出す虫も存在する。よってあり得ないとは言い切れない。個人的には、あれが自然物であるという線自体は薄いと思っているがね」
結局のところ、彼らの学識があの物体の正体を暴くことはなかった。しかし、それもやむを得ないことである。未知の銀河で発見された未知の要塞を解き明かすことなど、不可能に近いと言っても過言ではない。ましてや、それが近づく者を一人残らず焼き払うような代物であればなおさらだ。結局、かの物体にまつわる最も有力とされる仮説は、あれが地球外生命体の住むスペースコロニーであるとするものだった。
人類はまだ、あの要塞に秘められた危険性を知らない。
彼らにとってありふれた日常だった平和は、この日を境に崩れ始めることとなる。全人類の命運を分かつコインは、底の見えない海溝へと投げ込まれたのだ。これは、未知の文明に脅かされた地球で人々が死に抗う物語である。




