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秘密基地へ

 ありさはバイクにまたがり、風音(かざね)はサイドカーに乗り込んだ。その道中で二人に銃を向けてきたのは、軍隊だけではない。彼らの使役するロボット兵もまた、アップデートによってインダルジェンスの命を狙うようになっていた。

「クソッ……身動きが取れねぇって時に!」

「風音! 振り落とされないように気をつけて!」

 バイクは急激に加速し、包囲網の隙間をすり抜けていく。ありさは左手でバイクを運転し、右手で銃火器を駆使していく。彼女がハンドルから手を離すのは、銃の引き金を引く瞬間だけだ。普通なら、彼女の使うような銃火器はいずれも片手で取り扱えるような代物ではない。デザートイーグル、S&W M500、グロック17など――――ありさは他にも様々な銃を携帯しており、その全てを自らの手足のごとく使いこなしていた。彼女たちの目の前で、軍人とロボット兵は次々と倒れていく。


 ありさは銃の達人だが、それでも一人一人を順番に倒していくのはきりがない。


「お……おい! 今長距離を移動するのは賢明じゃねぇだろ! 夜中になるのを待った方が……」

「むしろ、今こそが絶好の機会だと思う。なるべく、私は一度により多くの敵を倒しておきたい」

「いくらなんでも多すぎるだろ! こんなの、捌ききれるわけ……」


 風音がそう言うのも無理はない。二人の周りには無数の軍人が身構えている。星の数ほどの銃声が鳴り響き、弾丸が塀やアスファルトの表面を勢いよく削り取っていく。そんな状況下で堂々とバイクを走らせることは、とても正気の沙汰とは言い難い。



――――だが、ありさにとっては日常茶飯事だ。



 彼女はロボット兵からM202ロケットランチャーを強奪し、それを片手で構えながら敵陣に銃口を向けた。


「ちょうど良い武器があった。敵陣に……な」


 四発の焼夷弾が放たれ、ロボット兵の軍勢を爆破した。爆炎は他のロボット兵にも引火していき、連鎖的に爆発の規模を広げていく。

「あの女っ……!」

「ぐわぁっ!」

「あっつい!」

 炎の渦は勢いを増し、軍人たちを容赦なく呑み込んでいく。この凄まじい光景を前にして、風音は動揺を隠しきれない。

「どこで使い方を習ったんだ!?」

「つい最近まで、射撃はただの趣味だった。今となっては、それが私の生き残る唯一の手段となってしまった」

「はぁ!? 射撃場でロケットランチャーなんか撃てねぇだろ!」

「M202ロケットランチャーの扱いに関しては、インダルジェンスの迫害が始まった後に訓練した。私が銃を使いこなせるようになるのに、一日もかからない」

 やはり桐ヶ谷(きりがや)ありさという女はただ者ではない。彼女はロケットランチャーを投げ捨て、バイクで無人の街を駆け抜けていった。二人の去った跡地では、弾痕からバベルに感染した軍人たちが化け物と化していた。化け物は無差別な破壊を繰り返し、街を壊滅させていった。



 ***



 風音が連れてこられた場所は、緑の芝の広がる土地だった。そこは建物が少なく、とても見晴らしが良い。

「秘密基地ってのは、ここのことか? こんな場所、見つけてくださいって言ってるようなモンじゃねぇか……」

 この土地がどのような場所か、彼女はまだ知らないようだ。しかし、ここは活動拠点にするには悪くない場所である。

「……こっち」

 ありさは手招きをして風音を呼んだ。彼女のすぐ目の前には、緑の芝生とは不相応なコンクリート製の扉がある。

「なんだこりゃ……」

「これは首都圏外郭放水路と呼ばれる地下水路への入り口。どこにでもあるような地下水路とは比べ物にならないくらい広いし、活動拠点には最適」

「この広い土地のすぐ真下が、まるごと地下水路なのか!?」

「……実際に見た方が早い」

 首都圏外郭放水路――――それは埼玉県春日部市に位置している「地下神殿」とも呼ばれる治水施設である。その異名に恥じず、この地下水路は神殿と呼ばれるのにふさわしい広さを誇っている。ありさは入り口の扉を開け、風音を中に案内した。

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