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第14話

ハジメは、あらゆるメディアを使って叫び続けた。


「一週間後、この場所で、この時間に脱線事故が起きる。

原因は運転手の不注意だ」


当日の現場には、野次馬とカメラがずらりと並んだ。

運転手は記者に囲まれ、怒号を浴びせられる。


「お前のせいで死ぬと言われている気分はどうだ!」


そんな状況で、不注意など起きるはずがなかった。


事故予定時刻は、あまりに静かに、何事もなく過ぎ去った。



当然、ハジメには批判の嵐が吹き荒れた。


「ハジメのデマのせいで仕事休んだぞ!」

「大スクープだと思ったのに、ただの空振りじゃねえか!」


ネットもワイドショーも、

ハジメを「オカルトに狂った道化」として叩き伏せる。


けれど、テレビに映るハジメは――

どこか清々しく笑っていた。


彼は、この批判を最初から受け入れるつもりだったのだ。

芸能界を干される覚悟。

自分を救ってくれた“あの女の子”の正しさを証明するために、

彼は自らの評価を泥に投げ捨てた。



翌週のラジオ。

ハジメの声は、いつもよりずっと力強かった。


「……ある女の子の話をさせて。

彼女は父親の無理心中に巻き込まれてビルから落ちた。

けれど奇跡的に助かり、未来が見える能力を得たんだ。

でも、彼女のウィンドウに映る未来では、彼女は死んでいた」


私は息を呑んだ。


「その子が僕を救ってくれた。

『あなたは三年後に死ぬ』って」


ハジメは淡々と語り続ける。


「電車の事故も、彼女に教えてもらったんだ。

だから僕はテレビで言った。

そうすれば、運転手のミスは限りなくゼロになるから」


「占いが外れたって叩かれているけど、最後に一言だけ言わせてほしい」


マイクの向こう側へ、彼は優しく呼びかけた。


「――占い師さん。僕は、大勢の命を救ったぞ。

君の力は、こんなにもたくさんの人を救えるんだ。……ありがとう」


アパートでラジオを聴いていた私は、膝を抱えてボソッと呟いた。


「……お母さんに、会いたいな」


「会えばいいじゃない」


背後から、結お姉ちゃんの声がした。


「……えっ、独り言なんだけど」


「会えばいいじゃない。私がついていってあげるから」


迷いのない笑顔。

その手は、あの日と同じように温かかった。



数年ぶりに訪れた、懐かしい家の前。

震える指で呼び鈴を押すと、中から母さん――景子が顔を出した。


彼女は一瞬で私だと気づき、言葉もなく抱きしめた。


「絢……絢……!

今までどこに……どこに行っていたの……!」


私は泣きながら、これまでのすべてを話した。

家出の理由、結お姉ちゃんとの生活、ハジメとの出会い。


母さんは静かに聞き終えると――

私の頬を、軽く、一発だけ叩いた。


「バカな子。

そんなことで、お母さんが幸せになれるわけないじゃない」


母さんは再婚していなかった。

私の消失が、彼女の時計を止めていたのだ。


私は結お姉ちゃんを紹介した。


「この人が、私を助けてくれたの」


母さんの「お礼」と「警察に届けなかったことへのチクチク攻撃」が始まる。

私は慌ててお姉ちゃんを庇った。


「違うの!

私がウィンドウを見て、『この人なら大丈夫』って選んだんだから!」


お姉ちゃんが遠い目で呟く。


「……絢ちゃん、それ庇ってる?

それとも私にとどめ刺した?」


家の中に笑い声が響いた。

止まっていた時間が、ようやく動き出した。


すべてが救われ、すべてが上手くいく。

そう信じて疑わなかった――その矢先。


事件が起こった


私は――攫われた。

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