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第7話:不帰の森と銀髪の監視役

「この国が抱える、最大の謎…ですか?」

バロルドは重々しく頷くと、執務室の壁に掛かっていた巨大な地図を指差した。王都から遥か西。広大な領域が、赤いインクで大きく塗りつぶされている。


「【不帰のかえらずのもり】。古の時代から、そう呼ばれている。これまで、国は何度も調査隊を派遣した。だが、誰一人として、森から生きて戻った者はいない」

「…全員、森の中で死んだと?」

「いや、それが分からんのだ。死体も、装備も、何一つ見つからん。まるで、神隠しにでも遭ったかのようにな」


力も、魔法も、あらゆる正攻法が通用しない魔境。だからこそ、とバロルドは俺をまっすぐに見た。

「お前のような、常識の外側から物事を見る目が必要だ。ワイバーンの頭蓋骨のヒビを、肩に止まった蛾に教えてもらうような発想がな」


心臓が、高鳴る。危険だ。無謀だ。だが、それ以上に、面白そうじゃないか。

「…分かりました。その依頼、お受けします」


俺の返事を聞くと、バロルドは満足げにニヤリと笑った。

「そう言うと思ったぞ。もちろん、ただで行かせるわけではない。お前には最高のパートナーを付ける」


バロルドが扉に向かって「入れ」と声をかけると、一人の女性が静かに入室してきた。

陽光を編んだような銀色の髪をポニーテールにし、機能的な軽鎧を身に着けた、凛とした佇まいの女性。その鋭い翠色の瞳が、俺を値踏みするように上から下まで見つめる。


「彼女はセリア。ギルドでも指折りの実力を持つAランク冒険者だ。森までの案内と、お前の護衛を任せる」


セリアと呼ばれた女性は、俺から視線を外さないまま、バロルドにだけ聞こえるように小さく、しかし明確な不満を口にした。

「ギルドマスター。これが、例の『切り札』ですか? どう見ても、ひよっこにしか見えませんが」


彼女は心底不本意といった顔で一礼すると、再び俺に向き直った。その瞳には、侮蔑と疑念の色が隠すことなく浮かんでいる。

「あなたが、特別調査官の相川ヒロトですね。話は聞いています。足手まといにならないよう、せいぜい私の後ろをついてきてください」


ギルドマスターの信頼は勝ち取った。だが、これから生死を共にするパートナーからの信頼度は、どうやらゼロからのスタートらしい。

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