第3話:合成の石板と、次のゴミ
隠し通路の先に広がっていたのは、ドーム状の広大な空間だった。その中央に、一体の巨大な石人形――ゴーレムが鎮座している。
――『静寂の守護者は眠る。その眠りを妨げることなかれ』
壁に刻まれた古代文字が、転生特典の翻訳機能によって脳内に直接流れ込んでくる。典型的な音感知トラップだ。床一面に敷き詰められた枯れ葉を踏めば、ゴーレムが起動するのだろう。
どうする? 俺は脳内のスキルリストを開く。これまでに手に入れた、約90個のゴミスキル。この中に、この状況を打破する一手があるはずだ。
【指を鳴らすと一番近いカラスがアホと鳴く】【どんな豆でも三つだけ正確に掴める】…
「我ながらひどいラインナップだな…」
自嘲気味にリストをスクロールしていくと、あるスキルに目が止まった。
【半径1メートルの湿度を5%だけ上げる】
…これだ!
俺は通路の境界線ギリギリに立ち、目の前の枯れ葉の床に向かってスキルを発動した。乾ききっていた枯れ葉が、ほんの少しだけ湿り気を帯びる。俺は慎重に、湿らせた部分にだけ足を置いた。…パキッ、という乾いた音はしない。フシュリ、というほとんど無音の沈む音だけがした。
いける!
まるで、見えない橋を渡るように。一歩進んではスキルを発動し、足元を湿らせる。数十分にも感じられた静寂の歩みを終え、俺はついにゴーレムの背後にある祭壇にたどり着いた。
祭壇の上には、黒曜石のような光沢を放つ一枚の石板が置かれていた。俺がそれにそっと手を触れた瞬間、石板がまばゆい光を放ち、俺の体の中に吸い込まれていく。
『ユニークアイテム【合成の石板】を獲得しました』
『これにより、所有スキルを二つ選択し、新たなスキルへと合成することが可能になります』
「……は?」
スキルを、合成する? ゴミスキルとゴミスキルを掛け合わせたら、ゴミじゃないスキルが生まれるかもしれないってことか!?
無限の可能性に全身が震えた。俺のハズレスキルたちは、すべてが新スキルを生み出すための「素材」に変わったんだ! 興奮が最高潮に達した、その時だった。
「本日もスキルガチャの時間でーす!」
頭の中に、いつもの軽快な電子音が鳴り響く。
「来い…! 最高の素材になってやるから、どんなゴミスキルでもドンと来い!」
祈りを込めてレバーを回す。カランコロン、と出てきたカプセル。その中に入っていた、今日手に入れたばかりの新しいスキルは――
【目の前の相手の戦闘力を数字で表示する。ただし、自分より格下の場合に限る】
だった。




