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第11話:音なき殺戮者と世界一うるさいアラーム

精神攻撃を無効化し、俺たちは森の奥へと進む。だが、森はあまりに静かすぎた。虫の羽音一つ聞こえないのは、異常だ。


その時だった。俺のすぐ横を歩いていたセリアが、何の前触れもなく、真横に跳んだ。彼女が元々立っていた空間を、音もなく、巨大なカマキリの鎌のような植物のツタが薙ぎ払う。


「くっ…!」


セリアは体勢を立て直し、剣でツタを弾く。しかし、ツタは一本だけではない。周囲の木々から、次々と鎌のようなツタが伸び、セリアを取り囲んでいく。その動きは速く、予測不能。そして何より、一切の音を立てない。


これが、森の第二の罠か! 甘い香りで感覚を鈍らせ、獲物が完全に無防備になったところを、この音なき殺戮者が静かに狩る。だから、争った形跡も、血の跡も、何も残らなかったんだ。


俺が焦る中、無情にも、しかし希望でもある電子音が響き渡る。


「本日もスキルガチャの時間でーす!」


もうこれに賭けるしかない! ガチャから転がり出たカプセルを、震える手で開く。


【半径10メートル内にいる全員の脳内に、けたたましい火災報知器の音を30秒間だけ強制的に鳴り響かせる】


「……これだッ!!」


俺は絶叫し、即座にスキルを発動した。次の瞬間、森の静寂が、内側から爆発した。


ジリリリリリリリリリリリリッッッ!!!


鼓膜が破れるかと思うほどの、暴力的な警報音が、俺とセリア、そして植物たちの脳内に直接、叩きつけられる。


「きゃあ!?」

セリアが思わず耳を塞いで膝をつく。だが、効果はそれだけではなかった。


『!?』『ウルサイ!』『痛イ!』『ヤメロ!』


今まで沈黙していた植物たちから、初めて苦痛と混乱に満ちた思考が【マインドエコー】を通じて流れ込んできたのだ! そして、セリアを襲っていた音なきツタの動きが、明らかに鈍り、乱れた。


「セリアさん、今だ!」


俺の叫びに、セリアは顔を上げた。彼女は警報音に耐えながら、動きが乱れたツタの根本――ひときわ太い幹を持つ巨大な木へと一直線に駆ける。


「はあああああっ!」


気合一閃。彼女の剣が、緑色の閃光となって幹を薙ぎ払った。断末魔は、なかった。ただ、俺たちを襲っていた全てのツタが、まるで操り人形の糸が切れたかのように、だらりと力なく地面に垂れ下がった。


30秒後、警報音が止むと、森には再び静寂が戻ってきた。

「…とんでもないスキルね、あなたのそれは…」

セリアは肩で息をしながら、俺を呆れたような、しかしどこか感心したような目で見た。


俺たちは顔を見合わせ、苦笑した。ゴミスキルとゴミスキルを組み合わせ、奇想天外な戦術を生み出す。それが俺の戦い方だ。俺たちは、倒された親木のさらに奥へと、歩を進めた。

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