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天国へ贈るコイン  作者: 西松清一郎
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1-8

 浅く腰かけていた成沢は姿勢を正した。「ここまでの事柄を整理しよう。まず窃盗団の標的名簿に、これは連中の仲間が持っていたものだが、鎧塚氏の名前があった。次に昨日の朝、純金の色をした五百円玉のようなものが発見され、交番に届けられた。さらに、鎧塚氏は五百円玉をモチーフにした奇妙なものを作品として発表している。そして」


「そして」知世も遅れをとるまい、と躍起になった。「彼女は窃盗団から直近のターゲットとして見られている、らしい」


「わかってきたな」成沢は胸ポケットに指を突っ込んだが、何も取らずに手を戻した。オフィスが全面禁煙になって久しいが、今のはデスクでも自由に喫煙できた頃の癖かもしれない。


「五百円玉の写真はないのか」成沢に訊かれ、知世は反射的に意識を担当事件に戻す。

「私もそれを待ってるんですが、鑑識からの報告がどうしても上がって来なくて」


 途方に暮れた子供のようにする知世を見て、成沢は片手で受話器を取った。そして、その手で暗記しているらしい鑑識係の番号を押した。会話は数十秒で終わり、それから一分も経たないうち、警部のメールボックスに鑑識からメッセージが届いた。PDFも添付されていて、それにはあの「純金色の五百円硬貨」表裏の写真と、成分表がまとまって表示されている。それは紛れもない、鑑識からの報告書であった。


 ???知世は急な展開に対応できず、画面を見ながら、ただ目を丸くした。


「二時間前には」成沢は少し得意気に見えた。「もう出来ていたらしい。担当の鑑識は、ちょうど今、ランチから戻って来た、とも言ってたな。向かいに出来た定食屋の山菜そばは悪くなかったそうだ」


 知世は聞きながら、ダークスーツの裾を両手で力いっぱい握りしめた。

 鑑識め、私が巡査だからって舐めてるわね。今度会ったら「木崎巡査を舐めてます、って言ってみなさいよ」って真顔で言ってやるんだから。

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