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「そのように、言い出したのは私なのですが、正直、先生にあれほど影響を与えてしまうとは思いもしませんでした。当然、私は一種の供養を勧めただけのつもりでいたんです。ですけれども、段々その『供養』に夢中になっていった先生は、天国へ贈るお金をモチーフにした作品をご自身で制作するようになりました。このような経緯で、ああいった貨幣をテーマにした作品が今回の展覧会で発表されたのです」
ここまで言った介護士の緊張はだいぶほどけたようだった。警部は話の最中、何度も小さくうなずいていた。それから、煎茶をもう一度喉に流した。
「先日駅前で『黄金色の五百円玉』が一枚発見されたんですが、それはもうご存知ですか」
「はい。刑事さん方が美術館にお見えになった翌日、昨日でしょうか、鋳造士さんから連絡がありました。『警察の方々と、例の五百円玉について話し合った』と。きっと先生が、いつか、金庫にあるコインをいくつかお財布に入れてしまったんだと思います。先生は今でも、『供養』に非常に熱心でおられますので。普段は二階の金庫に保管されていて、誰も持ち出すことはないんです。当然、本物のお金ではありませんから」
「よくわかりました」と成沢。「そういった事情を打ち明けていただき、大いに感謝いたします」
「早いうちに事情を説明した方がいいと思いまして、それで今日こうして、刑事さん方にお越しいただいたのです」
警部は軽く上体を起こし、視線を女性からそらした。そして一言「なるほどな」とつぶやいた。気づくと知世も、納得して首を何度も縦に振っていた。
「二階に仏壇があるということですが」警部が言った。「そちらも拝見させていただくことは可能でしょうか」
「もちろんです」
介護士が言うと、二人は同時に立ち上がった。それから再び、滑らかな木の廊下へと出た。




