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天国へ贈るコイン  作者: 西松清一郎
35/38

4-6

 ひのきの無垢材らしい階段を上ると、先頭の中尾がすぐ右手のふすまを開けた。そこは八畳の和室で、壁にはめ込む形で仏壇が安置されている。そして、その横の床框とこがまちに、重量のありそうな金庫が置いてあった。


 金庫の上には額に入ったイラストが飾られてあり、刑事二人はすり足でそれに近づいた。見ると、それは色鉛筆で描かれた少年の顔であった。目当ての昆虫でも見つけたように、白い歯を見せて、こちらを向いている。


「先生が描いた広嗣くんです」

 介護士に教えられるまでもなく、知世にも察しがついた。中尾が金庫を開けようと手を伸ばすと、知世は反射的に一歩下がった。


 やがてダイヤルロックが外され、厚い金属の扉が手前に開いた。そこに、丁寧にビニールを巻かれた、あの『純金色の五百円硬貨』の束が、何本も収められていた。


「一つ拝見してよろしいですか」成沢は、中尾がうなずくのを見てから、その一本を金庫から取り出した。そして、上下、側面を簡単に確認してから、それを元に戻した。


 警部が金庫から離れると、知世も真似て検分した。それらが、あの『純金色の五百円硬貨』と同じもの、と結論づけるのに長い時間はかからなかった。


 知世が振り返ると、警部は反対側の壁に設えられた棚を興味深げに見物していた。改めて中を見回すと、わずかではあるが、そこに子供部屋のような趣向がこらしてあることに気づいた。棚には野球ボール、運動靴、ゲームのキャラクターなど、少年のたしなみを思わせる品がいくつも飾られてあった。


「先生は繊細な方です」部屋の隅にいた中尾が言った。「お体に負担がかかっても良くありませんので、このことをあまり問いたださず、そっとしておいてあげてください」

 介護士は言い終えると、深々と頭を下げた。


 そのとき。

 警部の無線が鳴り、男の殺気立った声が室内の平穏を躊躇なく破った。

「成沢警部、確保しました」

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