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「お二人は先日、美術館へおいでになりましたね。私も先生の付添いでうかがったわけですけれども、そのときあの方も来られましたよね」
「鋳造技士の山喜さんですね」成沢が素早く言葉をはさむ。
「はい。ただ、山喜さんというお名前を、実は私は存じ上げておりません。というのも、彼とはクラウドサイトでしか連絡を取り合ったことはありませんから。ですが、彼があのとき美術館で、お二人に『黄金色の五百円玉』について告白したのであれば、こっちがその制作を依頼した方が彼であるのは間違いありません」
「あなたがクラウドサイトで、鎧塚さんの代わりに依頼をしたと」成沢が慎重に尋ねる。
「はい。順を追ってご説明いたします」中尾は人並みに緊張してはいたが、その言葉は滑らかで聞き取りやすかった。「一年ほど前から、鎧塚先生の体調がすぐれなくなったのは、もうお二人もご存知でしょう。私はちょうどその頃から半ばここに住み込む形で、訪問介護士として先生のお世話を始めました。先生も、先生の活動も私は以前から知っておりましたので、コミュニケーションはスムーズに取ることができました。移動には車椅子が必要ですが、受け答えはまだまだ若い頃と同じようにされますから。そうして日々のお手伝いをする中で、先生が私に、昔身ごもった息子さんについての話をするようになりました」
空気が少しずつ張り詰めていくのを知世は感じた。流産という言葉を軽々しく口にする気は起きなかった。
「超音波検査で、性別が男の子であるのはわかっていたそうです。そのときもう先生は、息子さんのお名前を「広嗣」と決めていました。ですが、妊娠三ヶ月のとき、悲しいことに流産が判明しました。自然流産で母体側に原因はなかったそうですが、当時先生はひどく自分を責めた、とおっしゃっていました」




