表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天国へ贈るコイン  作者: 西松清一郎
32/38

4-3

「お二人は先日、美術館へおいでになりましたね。私も先生の付添いでうかがったわけですけれども、そのときあの方も来られましたよね」


「鋳造技士の山喜さんですね」成沢が素早く言葉をはさむ。

「はい。ただ、山喜さんというお名前を、実は私は存じ上げておりません。というのも、彼とはクラウドサイトでしか連絡を取り合ったことはありませんから。ですが、彼があのとき美術館で、お二人に『黄金色の五百円玉』について告白したのであれば、こっちがその制作を依頼した方が彼であるのは間違いありません」


「あなたがクラウドサイトで、鎧塚さんの代わりに依頼をしたと」成沢が慎重に尋ねる。

「はい。順を追ってご説明いたします」中尾は人並みに緊張してはいたが、その言葉は滑らかで聞き取りやすかった。「一年ほど前から、鎧塚先生の体調がすぐれなくなったのは、もうお二人もご存知でしょう。私はちょうどその頃から半ばここに住み込む形で、訪問介護士として先生のお世話を始めました。先生も、先生の活動も私は以前から知っておりましたので、コミュニケーションはスムーズに取ることができました。移動には車椅子が必要ですが、受け答えはまだまだ若い頃と同じようにされますから。そうして日々のお手伝いをする中で、先生が私に、昔身ごもった息子さんについての話をするようになりました」


 空気が少しずつ張り詰めていくのを知世は感じた。流産という言葉を軽々しく口にする気は起きなかった。

「超音波検査で、性別が男の子であるのはわかっていたそうです。そのときもう先生は、息子さんのお名前を「広嗣ひろつぐ」と決めていました。ですが、妊娠三ヶ月のとき、悲しいことに流産が判明しました。自然流産で母体側に原因はなかったそうですが、当時先生はひどく自分を責めた、とおっしゃっていました」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ