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警察署からはタクシーで十五分ほど、駅までの距離はもう少しある。表通りにも面しておらず、まっさらな土塀に沿って歩くと、その存在に気づくことはなかなかない。周囲に外国人が別荘として使う邸宅が点在するなら、なおさらである。
知世が鎧塚邸前で身を隠すように待ち始めて数分後、成沢自らが駆るシビックが静かなエンジン音とともに到着した。
「待ったか」警部が後ろ手でフロントドアをばたんと閉める。
「いえ、それほどでもないです」知世は、付近にたまたま見つけた喫茶店でジンジャーピーチティーを飲んでいたことは言わなかった。
二人は民芸色の風合いを帯びる杉材の門戸へ近づいた。そして、成沢が同色の目立たないインターホンを見つけ、それを押す。機械を通して女性の声がし、それからやや急いだ様子の軽い足音が聞こえた。重い引き戸が開き、例の女性介護士、中尾が刑事らを出迎えた。
「警察の方々にここまで来ていただくなんて、感謝の言葉もありません」
「いえ、いいんですよ」成沢は小さく手を振ってから、「鎧塚さんは」と尋ねた。
「今、別の介護職員と街へ用事を済ませに行っています。一時間くらいで帰ってくる予定です」
このことはすでに知世も把握していた。今朝警察署で、この介護士から面会の申し入れがあったのを成沢から聞かされていた。
敷石の周りに撒かれた化粧砂利には、細い筋が何本も走っている。それらが車椅子によってついたものであるのは容易に想像できた。知世は警部の背中と足元を注視しながら、玄関の格子戸をくぐった。
それから二人は介護士について、木目の強調された廊下を渡っていった。地窓から覗く坪庭には、石臼や小振りな松が配してあり、明らかにそこにも美術家の意思が投影されている。しかし、それが警部の歩みを止めることはなく、知世も黙って中尾の案内する部屋へと入った。




