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天国へ贈るコイン  作者: 西松清一郎
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1-3

 一課のオフィスは隣で、縦に長い「コ」の字を描くだけでたどり着く。二三回のノックの後、ドアをおそるおそる開けると、未だいら立った様子でいる一課の面々が目に入った。助かることに、バスの乗客のように、入ってきた者にいちいち視線をくれる者は一人もない。


 室内を一度見渡すだけで、成沢警部はすぐに見つかった。奥の壁を背にする格好で、デスクに頬杖をつきながらディスプレイを眺めている。こういう時、平べったいウォーキングシューズは非常に役に立つ。知世は壁に沿って出来るだけ足音を消しつつ、警部の元へ歩み寄った。


「そこに丸椅子があるだろう」成沢は言いながら、左手で部屋の隅を示した。見ると、確かにそこに、昭和を思わせるレトロなスツールが数脚重ねて置いてある。知世は一脚手に取り、静かに警部の脇に置いた。そして、その上で身を固くしながら話が始まるのを待った。


 このとき、知世は初めて成沢の姿を間近で観察した。こうして改めて見ると、やはり刑事の体つきというのは大層なものである。膨らんだ筋肉によって、薄青いワイシャツとベージュのスラックスの生地はぴんと張っている。好奇の意識を向ける知世とは対照に、成沢はあくまで事務的な態度を維持した。警部が見つめる画面には盗犯関連の調書類がいくつも並んでいる。しかし、畑違いの知世にとってそれらは、解読前の暗号文かヒエログリフにしか見えなかった。


 そのうちデスクの列を挟んだ向こう側に、問題の火種を作った同期の姿がとらえられた。下村巡査は始末書でも作成しているのだろうか、疲弊し切った顔をディスプレイに向けながら懸命にキーボードを叩いている。昔であれば、その辺のぬいぐるみを顔に近づけるなどしてからかってやれたが、今は物理的にも状況的にも出来そうにない。

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