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充は返事をしながら歩き、
草むらの中になにかを見つけ、拾って
「ひゅっ」と投げてよこした。
年季の入った野球のボール。
ふにゃっとゆがむ軟式のやつ。
おれはパシッとキャッチして、相手の手元に投げ返した。
パシッと受けて、ひゅっと返す。
交互に続けりゃキャッチボールだ。
「思い出すなぁ……あの頃を」
「昔、ふたりで野球したよな」
「ああ、色々遊んだもんだ。『ヒーローごっこ』もよくやった」
窮屈だった、ガキの頃。
現実世界に嫌気がさして、どうにも逃げ出したくなった時。
おれたちは大人の目を盗んで、この秘密基地に潜り込み、思い切り子どもらしい気分で、ごっこ遊びに夢中になった。
奈良部「羊」一と、大「八木」充。
——羊男と、山羊男。
英語にするのがカッコよくって、安直にそんな名前をつけた。
宇宙のパワーを身につけた、
白いヒーローと黒いヒーロー。
いま考えればつまらない、ただの妄想の話だけど。
2人はどんな敵にも負けない、絶対無敵のペアだった。
……おれが新しい「夢」を見つけて、
ペアの解消を切り出すまでは。
(おれ、もう『ヒーロー』はやらねぇ……)
——本気で「画家」になりたいんだよ。




