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ひさびさに、自転車に乗って。
さびれた下町の方に向かう。
ガキの頃はやけに遠く感じた片道一時間の道のりも、
案外すんなりと漕いで行けた。
目的の建物はまだあった。
元はなにかの町工場。
ただし10年前からずっと、使われたような形跡はない。
穴あきフェンスをよじ登り、
赤錆びたトタン屋根の通路をわが物顔で通り抜けると、
そこだけぽっかり空の開けた、
小さな空き地にたどり着く。
枯れ草に囲まれたグラウンド。
埃っぽさと日なたのにおい。
隅には古いコンテナハウスと、土管がひとつ転がっている。
(ほんとに久しぶりに来たけど、ここはまったく変わってねぇな……)
時が止まったように静かで、なんだかちょっと物寂しくて。
初めてここを見つけた時の、「ゾクゾク感」を思い出す。
(ま、不法侵入だけどな!)
土管の上に腰を下ろして、ポストに投げ込まれていたという、
「手紙」をもう一度開いてみた。
四つ折りにされた白い紙には、文字らしきものは書かれておらず。
代わりにふたつの「絵」があった。
——白いヒーローと黒いヒーロー。
……でもそれだけで、充分だった。
秘密の合図は大人のおれを、再び「ここ」に呼び戻したんだ。




