5-13
おれの気持ちが落ち着くと、
ベルはエプロンのポケットから、なにやら紙を取り出してきた。
「羊一さま、見てくださいな。ベルも描いてみたんですの」
デッサンの捨て紙の裏側に、色えんぴつでぐりぐり描かれた落書きみたいなヘタクソな絵は、
(……人間か?)
爆弾みたいなナイスバディのとにかくまつ毛の長い女が、冗談みたいな格好をした黒髪の王子と並んでいる。
〈べる〉
〈よういちさま〉
絵からチラリと目を上げると、描き手はおれの顔を覗き込み、いい感想を期待していた。
「……描きたいことは伝わってくる。ちょっとえんぴつ取ってきな」
かるく手直しをして返すと、ベルは感激したようだった。
「うれしいですわ! うれしいですわ! 一生の宝物にしますわ!」
……正直、わるい気はしなかった。
「羊一さま。ベルは、もっと大人になって、『おぷしょんぱーつ』をたくさん買って、この絵のようになりますわ!」
「おい、それ、だれの金で買うんだよ?」
「もちろん、羊一さまですわ!」
「……わりぃがそんな甲斐性はねぇな」
「ありますわ! いつかきっと……」
おれの両手をはっしと取って、ベルはキラキラした目で言った。
「羊一さまは、いつかきっと……有名な方になりますわ! ベルは信じていますもの……」
(……やれやれ、調子のいいこった)
だがその真摯なけなげさは、
腐ってしまったおれの心にちいさな波紋を呼び起こした。




