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それからの日々はひどかった。
政府のお墨付きを得たことで、
世界愚是教団の動きはあからさまに目立つようになった。
街を歩けばいたるところに、マンダラ野郎の不気味な仮面のポスターが貼り付けられていたし、隕石の落ちた跡地には、東洋趣味な教団施設が蜃気楼のように立ち並んだ。
人々の不安は募るばかり。
警察の威信が落ちたせいで、ここぞとばかりに悪事に走る輩も増えたようだった。
「羊一さま、怖いひとたちが……」
外に買い出しに行く度に、怯えて逃げ帰ってくるベルに、
「心配すんな。おれがついてる。だいじょうぶ、今にマシになる……」
おれは気休めにそう話したが、千夜の意見はもっとドライでどこまでも救い様がなかった。
「残念だけど、あれが『大衆』。これまであなたが身を張ってきた、守るべきひとびとの本性よ」
パニックはひとの心を病ませ、平常時では考えられない愚行に走らせることも多い。
(わかっちゃいても、やりきれねぇ……)
おれは心底、気落ちしていた。
社会ってのは、大人ってのは、もっと賢いもんじゃないのか?
突然でてきた変な野郎に「世界が終わる」と言われただけで、そんなにすぐに崩れちまうほど根性ナシなもんなのか?
「弱い心の持ち主ほど、終末思想に惹かれるものよ。街で暴れる連中がそう。自分の不安や無力さを、より弱い者に向ける『暴力』で忘れ去ろうとしているの」
そして暴力の被害者たちは、さらなる恐怖を避ける想いで、てっとり早く安心できる「大きな樹」の下に身を預ける……。
結局、蓋を開けてみれば。
すべては敵の思惑通り。
教団の信徒は増え続けた。
ほんとうに、情けねぇ。
(情けねぇ世界になっちまった……)




