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見た目だけでは分かりづらいが、ベルはそもそも「人間」じゃない。
5歳くらいのガキに見えても、ほんとの用途は「めざまし時計」。
それも特売セールの時に、たたき売りワゴンから買ってきたものだ。
——おしゃべり時計「プリティ・ベル」(定価320円)。
いくらAIが進歩したからって、どんなものにも人格を付けたがる昨今の風潮はヘンだ。
「あの日、羊一さまに選ばれ……ベルの人生、変わりましたわ!」
生活家電がなに言ってんだ。
とはいえ、ここにきた頃は、なにもしゃべらず時間も告げず、いつまたセールに売られるのかと、びくびくしている節があったが——
二ヶ月ほどですっかり慣れて、いまの調子に落ち着いた。
(ちなみにこの『話し方』はたしか、なにかのアニメを観ていた時に、そこに出てくるヒロイン役の『お姫さま』に感動した結果、独自に学んだものらしかった)
「ベルがお姫さまでしたなら……羊一さまは王子さまですわ!」
「ははは、そんなもんじゃねぇ。基本無職でパチンコばっかり打ってる王子がどこにいるんだ?」
張り切りベルはいつもフルパワー。
ただのめざまし時計のくせに、無理して家事までしようとするからいつも失敗ばかりしている。
「うう……ベルは役立たずですわ」
時々あんまり悲しげなので、こっちが気を遣うこともあった。
「だれにだって不得意はあるんだ。そんなに気にすることじゃねぇ」
「いいえ、ベル、努力しますわ! それが『新妻』の役目ですわ!」
……たぶんお昼のドラマなんかも観て参考にしてるんだろうな。
「さあ! さあさあ、羊一さま! お部屋のお掃除の時間ですわ! ほらほらパンツがこんなところに! 羊一さまの……おパンツが!」
その時、ふいに玄関の方で、ドアの「ベル」が鳴る音がした。
「あ! お客さまですわ!」
ほこりはたきを持ったまま、ベルはぱたぱた駆けだした。
そんなに急がなくっても、どうせ充のやつじゃねえのか?
もしくはあれだ、宗教の勧誘。
だが、おれの予想ははずれ……




