8-14
彼は、
「ああ……」
と言ってうなづき。
——無理だぞ。
あっさり言った。
「そうか。ははは、当たり前だな……」
軽口を叩いたつもりなのに。
乾いた笑いは小さくなって、もう二度と笑えないような、つらい悲しみに変わっていった。
「……やはり、わたしのような機械は『ひとりの女』として見れないか?」
「困らせない」と言ったそばから、駄々をこねるとはみっともない。
だけど幸い、今の彼にはわたしの表情は見えてなかった。
「……こんなに好きになった相手は、キミが生まれて初めてなんだ」
……もう少し考えてくれないか?
……千夜さんのことが好きなのか?
声色だけは隠しきれずに、涙声になってはいたが。
(……わたしはただのサイボーグ)
こんな時、人間の少女のように泣けたらどれだけよかったのだろう……。
うつむいて涙を待っていると、
彼の手が、わたしの髪に。
そっとやさしく掛けられた。
「おまえはかわいい女だし、千夜と比べてなんていねぇよ」
……だけど、おれには夢があるんだ。
人生を、賭けた夢。
誰かを抱きしめて進めるほど、この道は、甘くない。
おれだけの、戦いだから。
「巻き込まねぇ」って決めてんだ。
「この夢が、叶うまで。おれは誰とも付き合わねぇ」
——ごめんな、飛鳥。泣かせちまって……。
彼の言葉に嘘はなく。
それが痛いほどにわかったから。
「うん……」
わたしは受け容れた。




