8-12
「キミはそれで……それでいいのか?」
我慢できずに問いかけていた。
こんなにも、がんばって。
こんなにも、傷ついて。
誰かのために自分を捨てて、
大事な夢さえ危うくなって。
大きな仕事を成し遂げたのに、
それでも世間に認められずに、
日陰の生活を続けていく……。
(……そんなの、あまりにひどいじゃないか)
(だったら、ずっと《《このまま》》じゃないか……!)
悔しさが、込み上げて。
叫ばずにいられなくなって。
わたしは彼の手をとった。
「こんなところで絵を描いたって……ずっとチャンスが来ないじゃないか!」
……わたし吐き出し終えるまで。
彼はじっと、待っていた。
じっと待って、うなづいて。
見えない両目でわたしを見つめ、
「……いいんだよ」
と呟いた。
「怒ってくれてありがとな。だけど、おれは『これでいい』んだ」
目のことは、仕方ねぇ。
戦ってれば、いつかこうなる。
むしろ「まだ絵が描ける」ってこと、
今の置かれたこの環境に、「ありがたい」とすら感じてる。
……でもな、ひとつだけ言わせてくれ。
「わるくねぇんだ、がんじがらめも……」
強がりでなく、本心で。
彼は苦笑しながら言った。
「なんだかんだで千夜や、ベルや、充やおまえがいてくれる」
そりゃあ、画家として名を上げたいし、ヒーローなんてしたくねぇけど……。
——みんなのことが、好きだから。
結局、「このまま」じゃなきゃいけない。
「……おれはどこまでいっても無職。無職のまんまがお似合いなんだ」
わたしはそれを聞いてつくづく、ため息の出る気持ちになった。
(そうか。だから、このひとは……)




