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「それで……実際、どうなんだ?」
いつまでも避けていられないから、わたしは思いきって聞いてみた。
——キミの目の……具合だが……。
「さぁな、どーにもわかんねぇ」
……なんとかなるかもしれないし、一生、このままかもしれねぇ。
明るさ暗さがぼんやりとだけ。
物の形がわからねぇんだ。
「まあ、一ヶ月でこれだから、望みは薄いかもしれねぇな」
ズシリと重い衝撃が、わたしの胸の中に響いた。
「それでは、もう……『絵』の方は……」
「ああ、ちゃーんと描いてるぜ」
予想に反し、あっさりと。
彼の口元は笑っていた。
「目が見えなくても絵が描けるのか?」
「『今まで通り』ってわけじゃねぇが、こうやって、手で触れたりさ」
ぺたぺたと机の上を触り、コップをとって指でなぞる。
「ダテに長年やってねーんだ。このアトリエの中のことなら、目ぇ瞑ったって大体わかる」
指差した部屋の一画に、うず高く積まれた紙の山は、どれも描きかけのデッサンだった。
静物画。
人物画。
えんぴつで描かれた「だれかの手」や、顔や、体……ふたつの乳房。
何度も描いては描き直し、滲んでぼろぼろになった紙に、焦りと苦悩が表れていた。
まるで光のない世界から、濃淡を、質感を——かつての記憶と想像力を頼りに取り戻そうとする、気の遠くなるような努力……。
「こればっかりは、やめられねぇよ。おれは諦めがわるいんだ」




