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「いいわ。いつでもいらっしゃい」
アポイントメントはすぐに取れた。
——彼もずいぶん落ち着いたから、いいタイミングかもしれないわ。
テレビ電話に出た千夜さんは、口調こそ以前のままだったが。
その顔はどこか寝不足気味で、やつれた感じが見て取れた。
(きっとわたしの知らないところで色んな苦労があったのだろう……)
なんだか申し訳なくなって、
「行っても邪魔にならないのかな……?」
つい、そんなことを言ったわたしに。
千夜さんはぴしゃりと言ってのけた。
「その方が彼も喜ぶの。気を紛らわせてあげてちょうだい」
仕事を休んで彼の自宅へ。
取り次ぎ役はいつものように、お手伝いの「ベル」がやってくれた。
「羊一さまは、お元気ですわ。最近はいつもおひとりで……アトリエに籠もっておいでですの」
——ですが、飛鳥さまとなら……。
そう言いかけて不意に黙って、下唇を噛んだ彼女の様子はやけにいじらしかった。
「ベル、心配しなくていいよ。わたしはただの『お友だち』。ところでキミは元気かい?」
ぱっと顔を上げたベルの頬は、りんごのように赤くなっていた。
「もちろん、絶好調ですわ!」
それを証明するかのように、アトリエのドアを激しく叩き、
「失礼します、羊一さま! スペシャルゲストがお見えですわよっ!」
「……なあ、ベルよぉ。レディってのは……まあ、いいや。通してくれよ」
ドアの向こうのくぐもった声。
久しぶりに聞く彼の声。
「じゃあ、入るけど……ほんとにいいな?」




