7-25
周囲から音が消えたのは、おれたちふたりがあまりに高く、
さびしい場所に来たからだった。
成層圏にほど近い、底抜けに青い大気の海で。
初めて生まれた命のように、
おれたちは、抱き合っていた。
「満足したか? シープマン」
飛鳥はおれに聞こえるように、「こつん」とおでこをつけてたずねた。
(やれやれ、子どもをあやすみてーだ……)
苦笑しながらおれは答えた。
「まーな。でも、おれのためじゃねぇよ……いいから『下』、見てみろよ」
……見おろせば、そこにはきっと。
おれたちが命懸けで守った、「あの街の空」があるはずだった。
「どーだ、なかなか綺麗だろ。観覧車からじゃ、こうは見えねぇ」
だけど飛鳥は喜びもせず、じっと無言のままだった。
「どーしたよ、なんか言えよ……」
「ちがう……こんなものじゃない……」
やっとひと言はき出して、小さく首を振るその動作は。
これまでのどんな表情よりも、おれの心を締め付けた。
(今、飛鳥の心の中で、これまでずっと大事にしてきた『信念』が揺らぎかけている……)
それだけは、避けたくて。
おれは飛鳥の髪を撫で、何度も何度もささやきかけた。
——飛鳥、おまえはいいやつだ。
「おまえはえらい、おれが認める。今までだって、ずっと真面目に、おまえは正しいことをしてきた」
これからだって、それでいいんだ。
おまえは誇っていいんだよ……。




