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魔珠  作者: 千月志保
第10章 魔珠の里
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製造室(5)

「それで里の期待通り訳に立ってくれているってことか」

 メノウが明るく笑いかけてきた。その傍らでコウは寂しそうにカプセルを見つめてぼそっとつぶやいた。

「恨んでいるわよね」

 スイがはっと顔を上げる。

「手放すことしかできなかったのに、母親だなんて言って目の前に現れて」

「いえ」

 スイはカプセルの上にあったコウの手を取って大きな両手で包み込むように握った。

「私は今、大好きなメノウの側にいられてとても幸せなのです。あなたが私を産んでくれなければ、ヘキ様に託してくれなければ、叶わなかったことです。メノウと出会って、セイラムに指導を受け、幼い頃から願っていたように魔珠担当官になってメノウの横にいる。カプセルの中では絶対になし得なかったことです」

 物心ついたときには剣を握っていた。セイラムは三歳から剣術の指導を始めたと言っていた。メノウに初めて会ったのは五歳のときだった。メノウは跡を継いで売人にならなくてはならないので、連れて回っているのだとヘキから教えられた。七歳のときだったと思う。いつものように中庭を駆け回って疲れて並んで寝転んだ。空が青く広がっていた。

「ねえ、メノウ。メノウはヘキ様の跡を継いで売人になるの?」

「そうだよ」

「他のことしたいとか思わないの?」

「だって、もう決まってるから」

 生まれたときから決められている。売人は魔珠を売るだけが仕事ではない。情報収集や場合によっては危険と隣り合わせの任務をこなさなければならないこともある。命が狙われることだってある。もうヘキの仕事を何年か見てきているし、継がせるつもりなら話も聞いているだろうから、売人がどれだけ大変な仕事かはセイラムから話を聞いたことしかないスイよりもずっと分かっているはずだ。

 そんな重圧を物ともせず、さらりと笑顔で返すメノウがスイにはまぶしかった。こんな大変な道を歩くことを定められているのに、メノウは天真爛漫に振る舞う。いつも明るく笑っていて、一緒にいるだけで楽しい。

 この笑顔を守りたい。二人で過ごす楽しい時間を守りたい。

「私も父上の跡を継ぐことはできますか?」

 ヘキとメノウを港まで送って家に戻ると、スイは訊いた。

「お前が望むのなら」

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