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魔珠  作者: 千月志保
第10章 魔珠の里
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長老(1)

 そうするしかなかった。大人になってもメノウの側にいつづけるには。

「でも、別に跡を継ぐ必要はないんだ。お前の好きな道を歩めばいい」

「私は」

 優しく笑いかけるセイラムをスイは毅然とした目で見上げた。

「父上の跡を継ぎたいです。魔珠担当官になってメノウの力になりたいです」

 そして、今、ここにいる。メノウの隣に。

「私は感謝しています。今、ここにこうしていられることを」

「スイ……」

 コウはスイの胸に飛び込んで顔を埋めた。スイが慌てて抱き留めると、コウはスイのローブをぎゅっと握った。

「たとえカプセルの中でもあなたと一緒にいたいとも思った。でも、あなたにもあなたの未来があるべきだ。そう信じてあなたをヘキに託した。

 一気に二十年以上言いたかったことを吐ききると、コウはゆっくりと顔を上げた。

「良かった。あなたが自分で選んだ道を歩いてくれていて」

「はい」

 スイは涙で濡れたコウの顔を優しく抱き寄せて、大きくなった手でしっかりとコウの身体を抱きしめた。

「母上の……おかげです」

 コウは声を上げて泣いた。スイはもう会うことが叶わないかもしれない母親の体温をしっかりと手に焼きつけた。


 次の日は長老に会うことになっていた。長老の屋敷は里の住民が最も多く暮らしているエリアの外れにある。スイが宿泊しているところも周囲の家屋と比べるとかなり大きく、部屋の数もあるが、長老の屋敷はそれ以上の広さで、長老会もこの屋敷の地下の一室で行われているという。

 メノウは慣れた口調で守衛に来訪を告げると、右側の客間に行くように言われた。メノウは迷う様子もなく、真っ直ぐに客間に向かった。

 座布団に正座して待っていると、白髪の物腰の柔らかそうな老人が入ってきた。魔珠の里という、大国も一目を置かざるを得ない集落を束ねるような人物だ。これまで里がしてきた感情に流されない断固とした決断などからもっと堅い感じの人をイメージしていたが、変に構えず、率直に話をした方がいいかもしれないとスイは思った。

 長老は座ると、手に持っていた剣を背後に置き、しゃんと背筋を伸ばした。

「長老のシンだ。長きにわたり里に協力してもらって、君とセイラム殿には感謝している」

「それは私と父の望んだことです。この度も難しい要求を受け入れていただいて感謝すべきは我々リザレスの方です」

 シンは庭の方に目をやった。スイも庭を見る。リザレスの庭と違い、背のあまり高くない木や植物が何種類も植えられている。異なる植物が何種類もあると雑然としそうなものだが、この庭は見事なまでに調和が取れている。

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