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魔珠  作者: 千月志保
第10章 魔珠の里
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長老(2)

「素敵なお庭です」

 スイが穏やかな微笑みを浮かべると、シンは頷いた。

「少し周りの景色も見て回ったかね? 他の国とはまた違う景色だろう」

 確かにどの国にもそれぞれ異なる文化があり、異なる景色が形作られている。だが、里にはそのどの国とも共通しない一線を画した文化が根づいている。

「里は小さな集落だ。魔珠がなければ、このように受け継がれた文化を守り、誰もが一定水準の生活を送ることはできなかっただろう」

 シンはスイの方に向き直った。

「魔珠の製造工房を見たか?」

「はい」

 慌ててスイが答えた。

「驚いただろう。君が〈器〉のオリジナルだったなんて」

「はい。全く想像していなかったことでしたから。ずっとセイラムとクレアの子どもで、リザレスで生まれ育ったのだと疑いもしませんでした」

 うつむいたままスイが淡々と言うと、シンは表情を曇らせて重そうに口を開いた。

「天然の魔珠は尽き、あんな方法でしか魔珠を供給できなくなってしまった。誰かを犠牲にすることによってしか。あんなやり方は間違っていると思うか?」

「いえ」

 少し考えてスイは返した。

「魔珠はもはや私たちの生活に深く浸透してしまって欠くことのできないものになっています。魔珠の供給を急に止めることはできません。これは里の存続だけではなく、世界のあり方までも左右する問題なのです」

 スイは悲しくも毅然とした目でシンを見つめた。

「私が長老の立場でも同じ判断をすると思います」

 魔珠のある世界に生きてきた人間はもう魔珠のない世界に戻ることはできない。どうしても必要ならばなるべく少ない犠牲で。その結果が今の状態なのだ。

「ですが、必要以上に魔珠を消費して犠牲を増やしたくはありません。どの国でも魔術兵器を製造して牽制し合うような、ましてやそれを使うような世界にはしたくないのです」

「ありがとう」

 シンはスイの手を握った。

「君は生まれてきてくれて魔珠の安定供給に貢献してくれただけでなく、我々の良き理解者であろうとしてくれるリザレスの魔珠担当官に育ってくれた。こちらの都合で散々振り回したのだから、こんなふうに言うのさえも申し訳ないが、君には本当に感謝している」

「里にいた頃になったことはもう覚えていません」

 スイは苦笑した。

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