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魔珠  作者: 千月志保
第9章 駆け引き
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担当官の仕事(3)

 そのとき、急にスイが胸を押さえながら体を折って前に傾いた。長い髪で顔を隠したままソファの前に倒れ込む。髪が肩と背中に広がった。背中が激しく上下している。呼吸に苦しそうな声が混じり、はっきりと息が乱れているのが分かる。この状態のスイを何度も見たことがある。

 襟元を広げて中をのぞく。思ったとおり呪術の痕が光を帯びている。

「キリト……」

 スイの目がわずかに動いた。キリトはその方向を見た。腰につけていた巾着が目に入った。キリトはガッと巾着をつかんで中に手を入れた。小瓶が取れた。見覚えのある色の液体が入っていた。キリトはすぐにそれが青バラの薬だと分かって栓を開け、スイのあごをつかみ顔を無理やり上げさせて唇に押しつけて薬を流し込んだ。

 口に入れた液体を全部飲み込んだタイミングを見計らい、スイをソファに寄りかからせる。スイの体は荒い呼吸のまま、ぐったりとソファに沈んだ。少しずつ呼吸が落ち着いていくのをキリトは手を握りながら心配そうに見守っていた。

「ありがとう」

 呪術が発動して苦しそうにしているとき、手を握るだけでもスイの呼吸が随分落ち着くのだ。研修が終わってマーラルから帰ってきたとき、スイはわざわざ薬を調合してもらいに長期休暇中もキリトを訪ねてきた。自分で調合した薬よりもよく効くのだと言っていた。それに、キリトの魔力は呪術の効果を和らげるだけでなく心地よい、とも。

「すまない……魔力、注がれたとき……」

「まだしゃべるな。もう少し休め」

 無理を押して話を続けようとするスイをキリトは制する。スイは目を閉じて呼吸が整うのを静かに待った。

「呪術が……反応したんだな」

 顔色が少し回復した頃合いを見計らってキリトが手を離す。キリトは絨毯に座り込んだままソファの端で腕を組んでその上に頭を載せてスイを見上げた。

「呪術は博士がすぐに気づいて効果が和らぐように処置してくれた。その薬も博士が調合してくれたものなんだ。それでも少しでも気を抜いたら意識を持っていかれそうなくらい苦しかったけど」

 実際ほとんどの魔術師はこの時点で失神してしまうと博士も言っていたが。

「その魔力で魔珠を溶かし、そのエネルギーをシールドに集めてそれを結晶化する。そうすると、魔珠二、三個分の結晶ができる。研究所ではその結晶は魔結晶と呼んでいた」

「魔結晶か。それはどうやって使うんだ?」

「魔珠と全く一緒だ。魔珠と同じ方法で同等のエネルギーを放出できるし、魔結晶を〈器〉に埋め込んでまた二、三個魔結晶を生成できる」

「確かにそれができれば、魔珠の輸入量を増やさなくても兵器を作るだけのエネルギーが確保できるな」

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