表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔珠  作者: 千月志保
第6章 疑惑
56/134

アリサの訪問

 それからひと月は外務室に持ち込まれたマーラルを始めとする周辺諸国の情報の分析に努めたが、目立った動きはなかった。

 いつものように剣術の鍛錬をしていると、休日の早朝だというのにシェリスに来客を告げられた。

「アリサさんが?」

「はい。ひどく慌てておられてハウル様がこちらにお見えになっていないかと。お見えになっていないとお答えすると、スイ様に会わせて欲しいとおっしゃって。応接室でお待ちです」

「ありがとう。すぐ行く」

 あのアリサが慌てているとは珍しい。なぜハウルがここに来ていないかなどと思ったのだろう。スイは剣を近くの柱に立てかけて急いで応接室に向かった。

「アリサさん?」

 ドアを開けながら声をかけると、ソファに腰かけて待っていたアリサはすっと立ち上がった。

「やはりハウルは来ていないのね」

 気丈に振る舞ってはいるが、その目に不安の色が浮かんでいるのをスイは見逃さなかった。鋭いアリサはそれに気づいたのだろうか。大きく息を吐き出して緊張を解くと、落ち着いた足取りでスイの方に歩み寄った。

「昨晩、あなたに話したいことがあるからここに来るって出ていったのよ。そして、朝までに帰らなかったら、これを渡すようにと」

 アリサは大切そうに抱えていたバッグから封筒を取り出してスイに渡した。

 帰らなかったらなどと言われてこんなものまで渡されたのだ。ハウルが危険なことに首を突っ込んでしまったことに聡明なアリサが気づかないはずがない。それでもハウルはアリサを信じてこの手紙を託した。そして、アリサもその信頼を裏切らず、何も言わずにハウルを見送った。

 事情を話さなかったのは、アリサや子どもたちに危険が及ばないようにしたかったからだろう。スイは封を切り、アリサに見えないように中に入っていた手紙を一読してすぐに封筒に戻した。

「アリサさん」

 スイはアリサの方に手を載せた。

「私はこれからキリトとどうするか相談します。アリサさんもお子さんを連れて一度ご実家の方に来てください。時間を決めておきましょうか」

「そうね。二時頃でどうかしら? 今日はお父様から夕食会にお呼ばれしているという設定。でも、ハウルが戻ってこないから泊めてもらうことにするわ」

 毎度アリサの頭の回転の速さには感心させられる。提案しようとしていたことが全て先読みされていた。スイは仕方なく苦笑した。

「では、キリトにそうしてもらえるように伝えておきます」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ