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魔珠  作者: 千月志保
第6章 疑惑
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ハウルの手紙(1)

「ありがとう」

 アリサはぎゅっとスイのローブの袖を握った。

「ハウルをお願い」

 スイは力強くうなずいてアリサを玄関まで送った。

「ごめんなさいね。急に訪ねてきて」

 扉を開くと、ひらりとアリサがスイの方に向き直って申し訳なさそうに言った。

「いつでもどうぞ。アリサさんなら歓迎しますよ」

「そんな素敵な笑顔で言われたら、ご婦人方に嫉妬されてしまうわ」

 こんな状況でも軽快な言葉のキャッチボールをしてのけるアリサに脱帽する。

「じゃあお願いね」

 スイの家にふらりと出かけていった夫を迎えに来たところ、来ていないことを知らされ、捜索を協力してもらう、そういう筋書きを演じる。誰か見張っているかもしれない。

 スイはアリサの姿が見えなくなるまで見送りながら、何気なく周囲に誰かいないか見回す。のんびりとした動作でドアを閉めると、そのまま走って二階に上がった。レースのカーテン越しからアリサをかなり距離を置いて尾行する人影が一つ見えた。


 キリトの部屋に姿を見せると、皮肉たっぷりに言われた。

「なんだ。またせっかくの俺の休みを邪魔しに来たのか?」

 だが、スイが真剣な表情をしているのにすぐに気づいて訊き直す。

「何かあったのか?」

「昨晩私に会いに行くと言って家を出たハウルさんが戻ってこられないそうだ」

「どういうことだ?」

 話が全く見えてこない。なぜハウルがスイに会いに行ったのか。

「うちには見えていない。そして、先ほどアリサさんがこの手紙をうちに持ってこられた。朝になっても戻らなかったら私に渡すようにとハウルさんから言われたそうだ」

 スイは先ほどの手紙をキリトに渡した。キリトはさっと受け取って一読する。


スイ君

 先日、魔術研究所の収支報告書に不審な点があって政務室の書庫で調査をしていたところ、偶然魔珠を利用した兵器開発に関する資料を見つけて、なぜこんな資料が政務室にあるのだろうと疑問に思いながら、ページをめくってみた。内容は、兵器開発の具体的な技術や方法、それに試作品の実験データなどだったが、驚くべきことにどれもリザレスの魔術研究所で記されたものだった。

 リザレスは秘密裏に兵器の開発を行っている。おそらく知っているのは、国王陛下、宰相、魔術研究所、そして政務室の一部の人間だけだろう。

 同僚が書庫に入ってきたので、急いで元の位置に戻したのだが、しばらくして見に行ったところ、その場所に資料はなかった。

 これからこのことを君に伝えに行くつもりなのだが、すぐに資料を持ち出されたことを考えると、その同僚も兵器開発に関わっている人間である可能性がある。無事に君の家にたどり着けないということもあるかもしれない。念のため、この手紙をアリサに託していこうと思う。

 この手紙が君の元に届く事態になっているようであれば、後はスイ君、よろしく頼む。

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