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魔珠  作者: 千月志保
第5章 魔術兵器
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脱出(4)

「もう直に回復する。いつまでも苦い思い出に浸っているわけにはいかないからな。他にやるべきことが多すぎる」

 ヌビスの魔力を得るために先ほど話してくれた呪術を刻み込まれたときのことを思い出してくれたのだ。それによって呪術が発動し、魔力を得た。だが、いくら他のことに思いを巡らせなければならないからといって呪術による苦痛で異状を来した体がすぐに元に戻るとは思えなかった。

「どこから連れてこられた?」

「こっち」

 構わず走り続けながらメノウに先を譲って先導してもらう。階段を上ると、扉があり鍵がかかっていたが、先ほど奪った鍵束の中から正しい鍵をすぐに見つけ、難なく開ける。再びスイが前に出て身を隠しながら、周囲に警戒しつつ走っていく。途中、見張りの兵士を二、三人ほど殴り倒して、二人は研究所から脱出した。そのままスイは森の北東部に向かった。

 不意に気配を感じ、スイは立ち止まった。すると、音も立てずに忍びの者が木の上から降りてきた。

「これ、研究所で押収した証拠品」

 その姿に気づき、すぐにメノウが魔珠を差し出す。

「分かりました。里に転送します」

 転送の方法を部外者であるスイに見られてはまずいのだろう。忍びの者は魔珠を受け取ると、そのまま姿を消した。

「後は私たちがマーラルから出るだけだな。行くぞ」

「うん」

 証拠品を手渡して肩の荷が軽くなったメノウは、少し元気が出てきたようだった。スイはいつも以上に呼吸が苦しかったが、メノウの笑顔で残った力を絞り出し、駆け出した。

「こっちだ」

 何分間走っただろうか。暗闇にすっかり慣れた目に馬屋が映った。

「二頭ほど拝借しよう」

 さすがに呪術によるダメージとそれなりの距離を走った疲れから、笑って見せた顔もゆがんでいた。メノウも息が上がっていたが、スイを励ますように笑ってうなずいた。

 馬屋にたどり着くと、スイは何の迷いもなく、さっと馬を選んで首を叩くと、メノウに手綱を渡した。馬は一瞬警戒したような目をしたが、スイが目を合わせてもう一度首を叩くと、すぐに肩に入っていた力を抜いた。

「私についてきてくれ」

 目をしっかり見たままメノウの馬に言うと、スイは自分用の馬を探して飛び乗った。メノウの方を振り返ると、メノウもうなずいてみせた。

 スイが馬の腹を蹴ると、馬が勢いよく走り出した。メノウも後からついていく。

 頭上には星が瞬いていた。

 早く逃げなければ。敵に気づかれる前に。

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