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魔珠  作者: 千月志保
第5章 魔術兵器
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貨物船(1)

 アインの町に入る前に馬を乗り捨てると、まだ夜明け前の人気のない通りを駆け抜け、港に向かった。

 そのまま何の迷いもなく、一隻の船に乗り込む。階段を降りると、木箱や樽がぎっしりと積んであった。スイは座り込み、木箱にもたれかかった。見たことがないくらいぐったりしている。呪術にそんなに体力を奪われていたのかとメノウは今更ながら驚く。

「お前も座るといい」

 メノウは素直に従った。疲れて目を伏せているスイの横顔を見る。

「貨物船?」

「そうだ」

 しばらくすると、甲板の方が騒がしくなり、やがて船が動き出した。

 疲れていたからかもしれないが、スイが木箱にもたれかかって目を伏せたまま、話しかけてこないので、メノウも横で息をひそめていた。

 足音が聞こえてきた。近づいてくる。スイが目を開ける。警戒するときのぴんと張り詰めた面持ちではない。

「うまくいったようだな」

 ランプを持った精悍な顔立ちの男が立っていた。どこかで見たことのあるような顔だと思ってメノウは疲れた頭をフル回転させて記憶をたどる。ぐったりしていたはずのスイが優雅な動作で起き上がる。

「ああ。何とか」

 そのとき、メノウがはっとして叫んだ。

「もしかして、グラファト?」

 すると、男はにやりと白い歯を見せて笑った。

「もう長い間合っていなかったから分からないかと思ったが」

 確かに最後に会ったのは十三歳のときだったはずだから、長い年月が経っている。スイが士官学校に入る前だったから、グラファトも十四歳だったはずだ。あの頃と比べると、随分背も伸びて、何よりも筋肉がついてがっしりした体格になっている。当時から引き締まった体だったが、どちらかというと細身な感じの印象だった。

 グラファトは十歳から週一回ほど、セイラムが休みの日に剣術を習いに来ていた。メノウもリザレスに来ると、セイラムに剣術を教えてもらっていたので、年に二回ほどだったが、グラファトと稽古したことがあった。

「どういう、こと?」

 目の前に立っている男がグラファトだと判明したものの、事態がまだ理解しきれない。戸惑うメノウを見てグラファトは頭をかいた。

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