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魔珠  作者: 千月志保
第5章 魔術兵器
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呪術の完成

「とても美しい動きだった」

「お褒めにあずかり光栄です」

 息を整えながらうっすらと目を開けて返す。

「痛みは、残っていたはずなのにな」

 すっと長い指でヌビスが傷痕をなぞる。刺すような痛みを感じて呻き声を上げようとすると、すぐに違う場所にはっきりした痛みが来て呻きが叫び声に変わった。

「驚いたな。そんなに大きな声が出るのか」

 大声で叫ぶと、それだけで苦しくなる。だから、なるべく押さえるように制御装置が働いていた。その制御装置さえ壊された。

 見るのは怖かったが、事実を確認しないわけにはいかなかった。離れそうになる意識をたぐり寄せ、目を開こうとすると、また別の場所に今度はゆっくりと痛みが走る。昨日と同じように歯を食い縛って耐えようとしたが、力が入らず、結局与えられた苦痛をそのまま受け入れるしかなかった。何とか目を半分まで開くと、ピントが合わない視界に、残酷な笑みを浮かべるヌビスと昨日の短剣が映った。短剣が振り下ろされ、そのまま立て続けに胸にさらに四本の線が描かれた。

 合計七本。七本の赤い線がスイの胸で交差していた。無造作に描かれたように見える線だが、これは特定の呪術を効果的に発動させるためにヌビスが何人もの人に試してたどり着いた図形である。

「これで完成だ」

 ヌビスは最も多くの線が交差している場所に触れ、魔力を注いだ。一瞬で水脈のように青白い光が傷口に広がる。じんわりと痛みも広がる。昨日と同じ感覚の痛みだ。ただ痛いだけではなく、全てを奪われてしまいそうな感覚。心まで粉々に砕けて砂のようにこぼれ落ちていくような感覚。痛みは持続したまま徐々に強くなっていく。叫ぶことさえできなくて呻き声を発しながらもがく。

 痛みが波打つように襲ってくるような感覚に囚われる。痛みで遠のいていきそうになる意識を痛みが引き戻しているようだ。ヌビスはその表情を興味深そうに観察していたが、やがて口を開いた。

「まだ意識があるようだな」

 はっきりと痛みが強くなったことを感じ取り、叫び声を上げた。その強度のままスイは痛みと闘い始めた。もう何が何だかよく分からなくなり始めていた。


 ヌビスの冷笑がはっきりと映って歪み出す。苦しい。息もできないくらい胸が締めつけられている。喉がからからだ。

 声が出なくなって喉まで締めつけられる。目の前が真っ暗になり、ようやく激しく乱れてはいたが、呼吸ができるようになる。

「スイ」

 優しい声がする。少し息が整ってきて目を開けて初めて夢にうなされていたことに気づく。頭が異様に重い。あの後、気を失って、その後もおそらく何度も呪いに苦しめられる悪夢にうなされながら眠っていたのだろう。

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