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魔珠  作者: 千月志保
第5章 魔術兵器
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剣術の講義

 エルリックは心配になってスイの様子を見に行くことにした。時間割をチェックすると、中庭で剣術の講義中だった。相当体力を消耗しているはずなので、実技も行う剣術の講義はきついかもしれない。

 簡単の声が聞こえた。中庭の隅まで走っていくと、ちょうどスイが剣術の講師レイと剣を交えていた。レイはマーラル文化の講義の一環として伝統的なマーラル式剣術の講義と実技を担当している。当然言わずと知れた剣術の名手だ。そのレイにスイは後れを取っていない。しかも舞うように美しい動き。他の研修生たちも見取れている。

「初めてとは思えないくらい見事な動きだな。どこかで教わったか?」

 休まず剣を裁きながら、レイが訊いた。確かにレイの言うとおり初心者の動きとは思えない。いや、むしろ上級者と言っても良い。マーラル式剣術には他の地域の剣術にはない特徴的な動きや型もあるのだが、それさえもほぼ忠実に再現できている。少し講義を聞いて手本を見ていくらか練習しただろうが、それでも急にこれほどうまくはできるわけがない。

「いえ。ですが、剣術は幼い頃から習っていて得意です」

 軽く息を切らしながら、スイも一撃跳ね返す。

 一度見て少し練習しただけで体得できる。だとしたら、スイは相当剣術の才能に恵まれているのだろう。

 エルリックはそう考えたが、実際は違った。スイはセイラムからどのような型の剣術で襲われても対処できるようにありとあらゆる剣術の型を叩き込まれた。いつも使っている型に比べれば触れる程度の知識しかないが、それでも皆無ではない。ただ、父から教わったと口にして、いらない詮索を受けるのは避けたかった。

 ふとエルリックは気配を感じて正面の二階の窓を見た。ヌビスが立ち止まって二人の手合わせを見下ろしている。一見穏やかそうなその表情は、温かく研修生たちを見守る眼差しのように見えるが、事情を知っているエルリックには不気味にしか見えなかった。明晰な頭脳、冷静な判断力、それに加えてこの剣の腕である。マーラルにとって危険極まりない人物。呪術のかけがいのある人物だ。それがヌビスの残虐な部分を満足させる。

 エルリックは怖くなってその場を離れた。あれだけ動けていれば、まだ大丈夫だろう。本当に怖いのはこれからだが。


 昨夜と同じようにベッドに座ってスイはヌビスを待った。ほどなくヌビスは姿を現し、昨夜と同じように上半身をはだけさせ、スイをベッドに横たわらせた。傷痕も消え、すっかりきれいになっていた胸に手を当てると、昨日の傷痕が昨日と同じように青白く光った。強い痛みを感じてスイは顔を歪める。

「いい顔だ」

 満足げに微笑んでヌビスは続けた。

「剣術の講義、見せてもらったよ」

 スイはまだ息を切らしている。

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