感謝(1)
「ありがたいお言葉ですが」
スイは穏やかな微笑みを浮かべた。
「なるべく軍には仕事がいかないように尽力しようと思います」
スイの言葉を聞いてカミッロはくすっと笑う。
「期待しているよ。その方が犠牲が少なくて済む。そして、何よりも楽できる」
そう言いながら、椅子に立てかけていた地図を手に取る。クラークとアイン、そしてその間にあるアルト海の地図だ。
「被害を最小限にするために海で迎え撃とうと思っている。優等生の君たちに私の考えている作戦を少し聞いて欲しい。君たちの行動の参考にしてもらってもいいし、意見があれば聞かせて欲しい」
三人は地図をのぞき込みながら一時間ほど意見交換した。
「有意義な時間だったよ。またぜひ手合わせに来てもらいたいものだ。セイラムにも時間ができたらお邪魔させてくれと伝えておいてくれ」
「はい。必ず」
スイとキリトは礼を言ってカミッロの私邸を出た。
翌日、スイはセイラムを訪ねた。
久しぶりに訪れたセイラムの私邸の前で立ち止まる。壁の向こうから元気の良い少年たちのかけ声と剣のぶつかり合う音がする。懐かしく感じるほど久しぶりだっただろうかとスイは考える。いろいろなことが立て続けに起きて実際に顔を見せていないというのは否めないが、それ以上に時間が長く感じられる。
馬を降りて門を開ける。そのまま中庭に向かう。
「よく来たな、スイ」
塾生の稽古を見ていたセイラムが気づいて振り返る。塾生たちも手を止める。
「馬を置いて中に入れ。クレアも待っている」
スイはセイラムの馬の横に今朝借りた馬をつないで首を叩いた。
「また後でよろしくな」
リビングに入ると、二人が並んで座って待っていた。
「この度はいろいろとご協力いただき、ありがとうございました」
まず礼を言う。誰の協力が欠けても次に進むことが叶わなかったのだから。
その後の言葉が出てこない。何から話せば良いのだろうか。いや、伝えたいことがあってここに来たのだ。他のことはどうでもいい。
「産みの親に、コウさんに会いました。研究所に勤めている魔術師で、とても優しい方でした」




