第四章第十四話 貴族のお付き合い
第四章第十四話 貴族のお付き合い
カイネと別れた俺は苗とかはそのままマジックバッグに入れ家畜を魔力で包んで転移した。ちょっと家畜がパニクったけど直ぐに落ち着いた。
数回の転移を繰り返してやっと全ての家畜を輸送し終わった。4頭の軍馬はそのまま騎士団に渡し世話を任せる。
塩村や大シュナイダー領の居留地との伝令に仕えるだろう。誰かに調教と飼育を勉強してもらわなければならないかな。
乳牛と黒毛牛、農耕馬、黒豚はそのまま草原に連れて行ってみた。特に慌てる事もなく雨の中、草をはみ出した。まあ牛舎とか厩舎が出来るまでは我慢してもらおう。
さて、烏骨鶏は雨の中、屋外って訳にもいかないよな。仕方ないから取り敢えず倉庫の一角に閉じ込めておこう。なんか餌やってないけど凄く地面を突っついてる小さな虫とかいるのか?
後は棚に珠を飾って放置すると。苗は明日だな。種も暫くは無理だから死蔵しよう。猫を抱いておうちに戻ると目聡く見つけたリュディーが早速寄って来る。
「どうしたの~。ねこ~。まだ小さいね」
「貰ってきた。ネズミ対策用だよ。可愛がってね。名まえはまだ無いから付けてあげましょう」
「わー。ねこだー。ぼく、ふてぶてしい猫しか最近は見ないから癒されるよー。かして!」
「どうぞ。あと家畜も増えましたので、厩舎とか牛舎、鶏舎なんかを作ろうと思います。今回買ってきたのは牛、馬、豚、烏骨鶏です。牛は乳牛の茶色と食肉用の黒毛。馬は軍馬と農耕用を買って来ています。乳牛は直ぐにでも搾れますよ。侍女さん達お願いしますね」
「りょ、了解致しました。旦那様。早速ミルクシチューでも作ってみます」
侍女さんが去って行く時、どなたか乳搾りの経験のある方おりますかしらとか何とか言ってるけど、まあ、大丈夫だろう。
奥さん達が猫を取り合ってるけどもう少し要るかな? 侍女隊の倉庫と騎士団の倉庫もあるんだよな。あとで頼んでおこう。
「そうそう、ティア~。姫んさん三人衆~」
「なんじゃ。その呼び方は。どうしたのじゃ?」
おれが仮村での話をすると物凄く嫌そうな顔をしてる。
「嫌じゃぞ。あそこに行くと碌な事がないのじゃ。そうじゃ、わらわ達は交代で一人出すからマイヤ達も勉強がてら行かせるが良い」
「うふふ。ナイスアイディアよぉ~、ティア」
外はザアザア降りなので大声で話してるとそれを聞いていた他のメンバーが一斉に逃げ始める。
「逃げても良いがどうせ強制じゃ。こちらで適当に選ぶのじゃ。当然、お前様もじゃぞ?」
なんてこった。俺は押しつける気満々だったのに。まあ、直筆の返礼とかあるから逃げられないとは思っていたけどさ。最初はティアとミヤとアンジュの3人。
直ぐに転移で連れて行く。屋敷に到着したら、さささっと侍女が寄って来て拉致していく。当然の様にお色直しからだ。まあ、小1時間は帰ってこれないだろう。
もちろん俺も侍従に掴まるかと思いきやそうでもない。とりあえず向こうの指示を出してからまた戻って来ると約束して拠点に転移。
「え~と、こっちは任せていいかな? 貴族関連の処理をしておかないといけないから」
「ああ、いいぞ。家畜小屋だろ?」
「そうそう。あと倉庫に枯れ珠あるから気を付けといて。果樹の苗があるから好きな所に植えといてよ。どうせドライアドさんが喜び勇んでちょっかいかけて来るだろうからどこでもいいんだけど。倉庫にある野菜とか小麦もまた持ってくよ。あっちの倉庫にも入れとくから。これで大分すっきりすると思うよ」
「ああ、やっと隙間が出来るのか。なら燻製とかも持って行ってくれ。侍女さん頑張ってくれてるから貯まる貯まる。家の方もすっきりさせておかないとそのうち寝る所がなくなるからな。塩漬け肉はどうする? さらに倉庫の増設も必要だな。収穫が上がる度にこれじゃあ、困るからな」
「うん。倉庫に入りきらない分は全部持ってちゃうよ。侍女さんの倉庫と騎士団の倉庫はどうなってるかな?」
副騎士団長と侍女長さんに聞いてみると当然の様に持って行ってほしいと頼まれた。まあ、俺たちと同じような状態だろうとは思っていたよ。
20反×3の畑の収穫量はバカにならなかった。大森林じゃなかったらそこまでじゃないとは思うんだけど。家畜に与える分を考えても多すぎる。外の部隊に分けてもまだ多いしな。
あまり過敏になっても仕方ないから内外の部隊が1年籠城出来る分だけ残して随時カイネに卸すとするか。マジックバッグに詰められるだけ詰めて屋敷の倉庫に入れよう。
倉庫以外も使って仮村にも備蓄する。もちろんまだマジックバッグの中は満杯のままだ。カイネが来てから一回処分しよう。そろそろ行かないとな。仮村の屋敷に転移する。
「お帰りなさいませ旦那様。ひい様達は既に仕事に掛られております」
「何から手をつけてるの?」
「はい。まずは贈答品の確認作業からお願い致しております。何分贈り物ですので私達で開ける訳にも行きませんので。侍従と侍女をそれぞれ数名づつ付けてリストを作成致しております」
「そんな所からなんだ。・・・。うちより家格の低い所のものは良いから侍女侍従を総動員してリストにしちゃってよ。切りがないよ」
「・・・既にその様に致しております。今は家格が同等かそれ以上の家ばかりでございます」
「えぇ~。俺そんなに知り合い居ないけどな~」
「ひい様達はお顔が広うございますし、会った事もない貴族家も繋ぎが欲しくて送ってきております。まあ、そのくらいの厚顔さは可愛いものです」
「そうなんだ。ちなみにうちより家格が低い所はどのくらい有ったの?」
「さて、数える事も出来ませんでしたな。貴族だけではなく、商人や役人やらからも来ておりましたから。一応言っておきますがまだ処理中でございます。到着も続々と継続中ですのでいつ終わる事やら皆目見当もつきません」
「・・・。苦労をかけるね。さて、じゃあ、俺は何からやろうか?」
「返礼もまずは確認が済んでからでございますから、飛び地の報告からお目を通して頂いてもよろしいでしょうか」
「うん。それから行こう」
ここからは凄かったよ。俺にはティア、グリンダ、アイダについて来ていた文官がそれぞれ10名、フォローの侍女侍従も5名付いた。飛び地全体をみるのかと思ったら、村単位からだったよ。
報告は多岐にわたった。収支報告はもちろん、裁判の報告、犯罪がらみの報告、周辺及び村内環境報告、天候報告、などなど。
俺は聞いてるだけ。正直細かい数字を言われてもチンプンカンプンだよ。所々こう言う時はここを気をつけろだのこの報告では何がダメだのと見るためのセオリーがあるみたいだ。
そう言うのを一々説明されながら紋章印かサインをしていく。重要なものは両方を併用する。
自分の領地にいくつ村や町があるかすら把握してないよ。きっとティア達だって一緒だと思う。急に増えたからね。
でも細かく見ていかないと汚職の温床になっちゃうんだよね。ちょっと見ただけでも杜撰な管理がされてるのが分かる村なんかもある。
例えばなんで検挙したか分からない様なのもあって奴隷落ちの判決が出てたりする。こう言うのは速攻ではねて再調査と関係者を洗いださないといけない。
まあ、そう言うのは文官がやってくれてるんだけど、その報告が酷い。名主がその家の娘を妾にするためにやってるとかそう言うのなんだよ。
でもこれはまだ分かりやすくていい方。これに町長だの郡長官だの衛兵長も絡んでたりとか癒着してたりするとお互いが庇い合うから分かり難くなってるし、嘘の報告まである。
それはさて置きさっきの続きがあるんだ。
こう言う問題はまた処理が面倒で、郡でちゃんと処理出来ずに県へそこもすり抜けて州にいってまたまたすり抜けて領主代理もすり抜けちゃって俺の所まで来てるってことだから上から順に叱って行かなきゃなんないんだ。
それでこの失点を記録して人事考課を付けていくと。逆に良い処理をしてるのもあるんだけどこれがまた面倒臭い。そう言うのは自慢したいし評価が上がるから報告書が長いんだ。
でもうちはまだ良い方。文官が良かったのか最初から報告書の書式の統一をしたからまとめ易い。どこの報告書も一緒だから見易いんだよ。
そしてそのまま、まとめれば帝都向けの報告書にもなっちゃう。
「・・・ねえ。最初と最後はあってるけど途中で色々やられてて分かんなくなっちゃうんだけど、うちの収益足りないよね?」
「ご明察でございます。そこに一発でお気付きになるとは! さすがは旦那さまでございます。現在秘密裏に調査を行っております。領主代理とも連携致しましてどこからこの横流しが行われてるかを突き止めている所でございます」
「どこかで裏金作ってる程度なら良いんだけど、食糧の流れと鉄鋼関係、特に武器の流れはよく見た方がいい」
「なるほど。反乱までおありと見ますか?」
「う~ん。現段階では分からないけど、それが一番不味いと思う。俺に変わった途端反乱、独立なんてなったら美味しい思いをする貴族もあるだろう? そこからの支援まで考えると結構大事になるよね?」
「はい。かしこまりました。もう少し調査を厳しく致します。また他の貴族家の動きも見ましょう。そうすればどこの貴族家かの特定も出来ましょう」
「あと、大シュナイダー領も注意して見てくれる。多分同時に仕掛けて来るかも知れない」
「かしこまりました。御父君にも協力を要請致します。上への報告は如何致しますか」
「現段階ではまだ容疑だけだから報告は出来ないよ。・・・騎士団の掌握は出来てるかな? 衛兵隊は不味い事になってるかもしれない。どっちにしろ調査待ちか」
色々とグレーな部分が見えてきた所でティア達が戻って来る。
「お前様、やっておるな。こっちは格上だけは確認が終了した。直ぐに返礼の作業に掛りたいのじゃが・・・何かあったか?」
どうもグレーぽいことを伝えるとティアの眉間に皺が寄る。
「・・・前々から計画されておったな。領主変更のごたごたに付け込まれたみたいじゃ。了解した。アイダ達にも申し送りをしておく。わらわ達も注意して見ておくのじゃ。それはそうとさっさと高位貴族への返礼をしないと不味いぞ。そっちも大事になる」
「頭が痛いね。俺は文字書きからくり人形になるからお手本を作って。直筆は何通ぐらいになった?」
「ふむ。まだ大したことはない。精々百数十じゃ。お前様がせめて伯爵なら半分以下になったじゃろうに。まあ、序盤戦じゃしこんなもんじゃろう」
「・・・まだ序盤戦なんだ。返礼品はニコラスに調べさせれば、良い物を見繕ってくれるかな~?」
「何を言っておるんじゃ。そんなものよりほれ、わらわ達には武器があろう。相手もそれとなく言って来ておるよ。小麦が欲しいとな。少々出し渋って別の返礼品との抱き合わせが無難じゃろう。くふふ。きっとうちはどのくらい頂いただのとサロンで自慢話に使われような」
「え~。じゃあ、まさかこれからどのくらい分配するかとか決めるの?」
「当然じゃな。野菜も付けるかつけないか、海鮮はどうするか。相手の家格と今後も考えんといかんじゃろう」
「ひい様。少しよろしいでしょうか。家格の低い者の中にもこれはと言う者たちがございます。出来ますればそこにも分配して頂ければと愚考致します」
「と言う事じゃが、お前さまどうする? 味方は多いに越したことはないのじゃが、有象無象まで抱え込むことはないのじゃ。されど侍従長が進言するくらいじゃ原石たりうると思うぞ」
「じゃあ、要検討と言う事で」
「ありがとう存じます」
「皆、ありがとう。俺の勉強会はここでお開きだけど引き続き処理を頼みます」
文官やら侍従、侍女の皆さんが丁寧に頭を下げて書類を抱えて退出して行く。
「さて、忙しくなるのじゃ。手すきの者を集めよ。小麦の仕分け包装作業は早急に行わねばならんのじゃ。精々見栄えをよくせんとな。返礼品に小麦を送るなど前代未聞の事じゃ。桐箱が良いかの、それとも絹袋なんぞでも作らせるか・・・家格で分けるか」
当然ニコラスを呼び出して、リストを渡して包装関連と返礼品を見繕わせる。ニコラスにはみやげとして小麦袋を1袋持たせて味見させてやる事も忘れない。売るんじゃないぞと注意しておく。
暫くして直ぐにニコラスが戻ってきた。小分け用の絹袋を持って来たようだ。早速1kg、2kg、3kg、5kg、10kgに分ける。包装に関しては侍女さんが詳しかった。
さてと今度は貴族ごとにどのくらい渡して行くか検討した。皇家には最大量を渡すとしてこれを基準に後は減らして行く。皇家には綺麗に包装され、桐箱に詰められた贈答用の物を個人ごとに渡す。
野菜のセット、海鮮のセット、肉類のセットも付属する。皇帝陛下、皇后陛下、皇子達、皇女達ごとに決めていく。もうこの段階で俺は音を上げる。
だって面倒臭いんだもん。次にバウム大公爵家、元帥のカエザル侯爵家、と造って行きシュナイバッハ侯を始めとした大臣クラス、次官クラス、内務、外務、軍務とで分ける。
次は教会関係者だ。教皇、枢機卿、大司教、司教の分を取り分ける。最後が外国勢だ。これは外交問題にも発展するので慎重に検討した。
仮想敵国と言えども祝を送って来るので面倒だ。外交官名義程度なら無視しても良いが大抵は国王やら宰相やら名義で名代に外務大臣クラスが持って来る。
「何この面倒臭いの! まさかと思うけど少ないからって戦争になるの?」
「当然じゃ。軽く見られたとあっては戦争の引き金になり得るのじゃぞ。逆に言えばこれ幸いと吹っかけてくる場合もあるのじゃ。慎重にせねばならん」
「えぇ~。皇族面倒臭! 俺の感覚じゃあ、もうお手上げだよ。名前すら知らない人ばかりなんだから。やっぱり冒険者でもやってれば良かったかな~」
「愚痴っても始まらんぞ。私だって何をしているのか分からないままやってるんだからな」
当然の様に手伝わされていたマイヤが言う。
「そうだよ。僕も全然分かってないよ。僕が知ってるのはシュナイバッハの爺ちゃんくらいまでだよ」
「・・・ミヤ、止めよう宰相を爺ちゃん呼ばわりするのは。身の危険を感じるよ」
「ティアは全員面識があるのですか? 私たちではもう知らない人だらけです」
「はっはっは、アンジュよ。当然知らんのじゃ。国内ですら知らんようなのもおる。外務系に秀でた文官に確認しながら決めているのじゃ。もちろんお前様名義での返礼じゃから小シュナイダー家としてどこと結ぶかで考えておる。諸外国勢は、うちからの返礼を外務関連を通して送る事になる。あやつらがうまく微調整するじゃろうからこちらは気にせんでいいと思うぞ。さて今日はもう遅いからこの辺で良いじゃろう」




