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第四章第十三話 カイネの商売

第四章第十三話 カイネの商売



「さて、買い取りはこれでいいね。今度はうちが買い取って貰う番だ。カイネさん欲しいものは何?」


「あ、え、た、枯れ珠っす。それから家畜ももっと、軍馬も。珍しい苗木とか種っす」


「うん。ここは手を抜いちゃいけない所だよ。分かってる? 僕らが納めた品を大森林が育てる。そこで産出されるものがまた僕らに回って来るんだ。物凄い物になって来る。だから最上の物を納めないといけない」


「は、はいっす。あ、贈答品。奥様とも相談しなきゃいけないっす」


「さっき納めたカイネさんの品も良い物だよ。だから坊ちゃんも、もう一度商売してくれるんだ。だからこっちも気を抜いちゃいけない。まず、軍馬は直ぐには無理だよ。坊っちゃんの父上様、ここの侯爵様が騎士団を作ってるからそこが優先なんだ。これは情報を持ってけば坊ちゃんも納得してくれる。だから追加で2頭だ」


「分かったっす。でもそこを持って来るから評価されるっす。あちきの情報だと30人の騎士が大森林に居るっす。あと戦闘メイド隊が13、旦那様と奥様で13っす。皆さん騎乗できるっす。旦那さんと奥様方には特にいいのが必要っす。まだ他にも大森林に入って無い方達もいるらしいっす。続けて集めて欲しいっす」


「それはこっちでも把握してるよ。了解したよ。君も独自で動くんだろ? 黒毛牛と烏骨鶏は10頭と20羽用意した。これで繁殖できると思う。さらに黒豚も仕入れてみた10頭だ。これも高級食材だよ。気に入ると思う。僕が考えた家畜はこんなものだよ。カイネさんは? 何を狙ってたの?」


「あ、あちきは・・・馬を考えてたっす。実は馬は有用なのであまり食べられてないっすけど、美味いっす。先の大戦で軍馬を食べたって言う兵士に聞いたっす。軍馬は肉としてはあまり良くないっすけど、美味かったらしいっす」


「・・・馬か。今は難しいな。品薄な上にめったに食べない。でも将来的に食肉用の馬も大森林から出たら凄い事になるな。今後考えよう。他には?」


「後はヤギっす。乳も取れるっす。除草にはもってこいっす。農家なら役立つっす」


「うん。いいとこつくね。除草か。肉はそんなに人気は出なくても他の役割もあるか。仔山羊の内にどんどん絞めてけば美味しいしね。よし、ヤギも仕入れよう」


「後は苗っす。ぶどう、ミカン、レモン、モモは仕入れたっす」


「僕は、イチゴ、バナナ、メロン、リンゴ、マンゴーを仕入れといた」


「助かるっす。変わり物の種はないっすか?」


「大方坊っちゃんが集めてしまったからな~。大麦と蕎麦と落花生を集めてみたよ。今回はこれで納めてくれ」


「仕方ないっす。あちきもそんなに思いつかないっす。あと枯れ珠っすけど?」


「もちろん集めたよ。鉱脈珠×2、金鉱珠×2、銀鉱珠×2、鉄鉱珠×4、宝石珠×3、ミスリル鉱脈珠、オリハルコン鉱脈珠全部枯れちゃってるけどね。持って行って」


「は、早いっす。有り難いっす。贈答品は奥様から聞いてからにするっす。で、全部でどうなるっす?」


 ニコラスがパチパチと算盤をはじいていく。


「さっきの売り上げがこうだろ? こうしてこうでどうよ」


「高いっす。枯れてるんだから珠はこうっす。軍馬もまだ高いっす」


 カイネがパチパチぱちと弾き直す。


「うわぁ。鬼か! それじゃあ儲けがないだろうが」


「いいや、あるはずっす。騙されないっす。ニコラス会頭は演技上手っす」


「くっ。さすがは坊っちゃんが気に入る訳だ。分かった分かった。でも坊っちゃんの所の品はうちに優先で出してくれ。これが前提条件だよ」


「仕方ないっす。でも永久じゃないっす。市場が落ち着くまでっす」


「そんな簡単に落ち着く訳ないから良いだろう。それはそうとカイネさんは坊っちゃんに塩を納品してるかい?」


「ただじゃ、情報は出せないっす。それも塩なんて恐ろしいもの何も言いたくないっす」


「かっー、がめついな。じゃあ、うちであんたの馬車融通してやる。どうせそんだけ儲けが出たならロバってわけにもいかないだろ。どうだ?」


「2頭だてで幌付き。荷馬車の大きさは最大で今、流行りのダブルスプリングなら答えるっす。塩は簡単には答えられないっす」


「だよな~。わかった。俺専用の馬車を1台回す。金貨10枚だ」


「買ったっす。塩は納めてないっす。もう聞きたくないっすし会頭も沈黙は金なりっす」


「・・・そうか。分かった他に回す。チッ。少量で良かった。もう増やさん。侯爵領に吸収しよう」


「・・・いや、その塩、あちきが買うっす。持ってくんで馬車にお願いするっす。じゃあ、会頭さんありがとうございますっす。また旦那さんの所に戻るっす」


「ああ、坊っちゃんの婚約祝も馬車に積んでおくから持って行ってくれ。お前もなんか持って行った方がいいぞ」


「・・・くっそっす。商売が上手いっす。じゃあ、今流行のドレス12着下さいっす。帝都で有名な紅もあるっしょ。それも12個っす」


「あいよ。締めて金貨15枚ね。格安だよ。そんだけ儲けたんだもっと買ってけよ」


「分かってるっす。納品が終わったらまた来るっす。ロバ吉は処分しといて下さいっす。いい所で飼ってもらえるとうれしいっす。じゃあ。お茶上手かったっす。旦那さんの所の次っすけど」


「あいよ。侯爵領の農家にでも渡すから心配すんな。それとあそこと比べるな。どんだけいいお茶使ってると思ってるんだ」


「・・・ナイスっす。会頭。最高級のお茶もほしいっす。旦那さんに渡すっす」


「ちっ。気付きやがった。分かったよ、もってけ泥棒。僕が持っていこうと思ってたのに。金貨2枚だよ」


「げっ。そんなの飲んでるっすか!? 仕方ないっす」


 来る時は蓑を被ってきたカイネが、帰りは高級馬車に乗って家畜を連れて屋敷に向かった。数百メートル往復しただけで馬車の中には大金貨の袋が3個ほどある。


 魔力が満タンの珠は高かく売れたようだ。小麦は言うまでもなく。儲かったのはうれしいが何もしてない気がする。これからどうしようか。旦那さんの言うものを集めて来るだけでいいのか。


 それもニコラスさんがほとんど集めてくれる。かと言ってあそこを外すわけにはいかないし。取り敢えず人を雇わないとダメかな。


「あ、もう着いちゃったっす。失礼しまっす。ああ、侍従長さん。度々申し訳ないっす。旦那さんはおいでっすか」


「はい。お待ちでございます。ちょっと出かけただけで、もう馬車が変わってらっしゃいますね。カイネさんは商売上手でございますね。旦那様が見込まれるのも頷けます」


「いや、あは、あははは。お邪魔しますっす」


 侍従長に案内され、侍従長にお金の入った袋を2個、自分では塩の袋とお金の袋を持ってさっきと同じ部屋に案内された。


「やあ、カイネ。思ったより時間が掛ったね。今回は仕込ませてもらったよ。悪いね」


「いえいえ。これが収支です。外に苗木と家畜を追加してあります。それとこれがマジックバッグですお返し致します。中に枯れ珠入ってますんでご確認ください。それとこの袋3つが今回の儲けですご査収ください」


「うん。2つは俺が貰うけど1つは君の儲けだろ? 今度はそれを資金に色々やってもらうからね。もう俺が資金提供しなくても行けるね? こっからが本番の商売だよ。手加減しないからね。えへへへ」


「お手柔らかにお願いしたいっす。こんなに貰ったら貰い過ぎっす。中は金貨じゃなくって大金貨っす」


「ああ、分かってるよ。大きな商売をしたんだ。そのくらいは当然だよ。ニコラスがへそを曲げたらこの商売は成り立たなかったんだ。上手く立ち回った様だね」


「そうでもないっす。揉み手で擦り寄って来たっすから成功しない訳ないっす。そうだニコラスさんから婚約祝を預かって来てるっす。それとあちきも今回儲けさして貰ったんでいくつか奥様達に持って来たっす。それといいお茶が有ったんで旦那さんにどうぞっす」


「気が利くね。有り難く頂くよ」


「それとこれ岩塩っす。・・・」


「そうか。これはうっかりしていたな。買い忘れてたよ。ありがとう。ニコラスも承知してるかい?」


「はい」


「この後どうする? しばらくしたらまた珠の商売をしてもらいたいけど」


「はい。ちょっと各地を回ってみるっす。いいもの仕入れて持って来るっす。ヤギはニコラウスさんが納品してくれると思うっす。除草にも使えて便利っすから頼んでおきましたっす」


「やあ、凄い。それも助かるよ。草が問題になっててね。そう1週間くらいしたら戻って来てよ。それとマジックバッグはちゃんといいものを購入しなよ」


「分かりましたっす。旦那さん。あちきはどこに本拠地を構えればいいっすか?」


「もちろん小シュナイダー領だよ。飛び地の方が大きいけど、そっちも見て貰いたいな。これが紹介状だよ。大シュナイダー領の父様と兄様に母様宛てと飛び地の領主代理をしてもらってる兄様達だよ。いつ使うかは自分で決めてね」


「有り難うございます。これニコラス商会と被るっすよね? 大丈夫でしょうっすか?」


「うん。頑張れ」


「酷いっす。じゃあ、時は金なりっす。出発するっす。では1週間後に来るっす」


「うん。よい旅を」


 旦那さんのお屋敷を辞した後、またニコラス商会に立ち寄る。今度こそ本当の仕入れだ。馬車のまま車回しを通って裏手につける。裏手は凄い賑わいだった。


 いろんな行商が次々と荷物を降ろして行く。それを人足が次々と倉庫に運び込んでまた別の物を馬車に積んでいく。カイネが馬車を回すと若手の商人が近寄って来て挨拶をして来る。


「やあ、女商人さんか。珍しいね。立派な馬車だね。僕が担当させてもらうよ。買いか売りかどっちだい?」


「買いっす。ここのお薦めはなんすか?」


「そうだな~。魔獣の狩猟品とかすんげえ小麦なんだが小麦は無理だ。後は材木なんかもあるな」


「魔獣の狩猟品にするっす。馬車の荷台に一杯積んでほしいっす。上級魔獣からあるだけ積んでほしいっす。下級はダメっすよ」


「おいおい、勘弁してくれよ。まあ、仕方ないか金は持ってるんだろうな?」


「ここの荷物全部買い占めてもおつりが来るっす。カイネ・ボウラが買いにきたっす。それで分かる筈っす」


「へえ~。うち相手に名前で買うってか。ちょっと待ってろ。番頭さ~ん。カイネって言う商人知ってますか? 今来てるんだけど・・・ひぇ~、大番頭さん」


 その声を聞きつけた途端奥から大番頭がすっ飛んできた。


「お前は他を処理してろ。失礼致しました。カイネ様。当商会の大番頭を務めさせて頂いています」


「ああ、悪いっす。ここのお薦めが魔獣の狩猟品だって聞いたんで上級から積めるだけ頼んだ所っす」


「そうでございますか。確かに魔獣製品がお薦めですが、カイネ様なら砂糖なんかも如何でしょう。最近大シュナイダー領で産出したものです」


「・・・止めとくっす。この雨じゃ碌な事にならないっす。他にないっすか?」


「では、ワイルドボアやアーマーオックスの肉の塩漬けなんかは如何ですか」


「ナイスっす。思い出したっす。蟹とかエビの魔獣の肉が欲しいっす」


「これはこれは。ジャイアントクラブとレッドシュリンプでございますか。参りました。ご存知でしたか。分かりました肉は如何致しますか?」


「貰うっす」


 仕入れを済ませて一路北上する。2頭だての馬車の速度は伊達じゃなかった。快調に飛ばして行く。とにかく1週間しか時間がない。途中で西に折れ帝都には向かわない。


 西部の商業都市を目指す。途中で御者を雇って寝ずに飛ばす事1日。到着した商業都市で早々に積み荷を売り払い、かなりの儲けを出した。


 さらに高級ワインやら銀の装飾品を買い込む。さらにエルフが好みそうな物を次々に購入していく。優れた弓や矢、細剣などの武器、防具だ。


 そのままさらに西に進んでエルフの古森林を目指す。さらに1日飛ばしに飛ばしてやっと到着した。


「誰だ!? ここより先はエルフ王国だ通す訳にはいかん」


「初めましてっす。シュナイダー男爵の所のおかかえ商人っす。メル奥様とかルル奥様にはお世話になってるっす。それでもダメっすか?」


「神樹王様と聖樹王様の所の者か。よかろう。商人と言うことは何か取引をしに来たのか?」


「そうっす。出来るだけ気に入って頂けるような物を持って来たっす。あちきが欲しいのは、エルフ野菜の種と・・・っす」


 難しい顔をした番兵のエルフだが何も言わずに通してくれた。ここからエルフの村まではかなり距離があるが、精霊の道を通してくれ、直ぐに到着する。


 時間がない。さっそと商売をしないと。大巫女さんに面会して、商売をすることにした。一々民を相手にしている時間がないので本丸と交渉することにする。


 こちらの商品サンプルを渡してほしい物を言ってもらう事にした。こっちは大巫女さんに頼んでエルフ野菜の種を手に入れる。ここまでは問題ない。


 さあて、どうやって切り出そうかな。


 まあ、当たって砕けるしかないか。直接あるもの(・・・・)を依頼してみる。案の定、難しい顔をされたが拒否はされなかった。なら縁故と物欲で何とかするしかない。


「こちらが持ってきた商品は全て置いていきますっす。お譲り頂いたものは、シュナイダー男爵かその奥様以外には売りませんっす。お金は追加でこれ一袋置いてきますっす。どうでしょうっすか?」


「仕方ありませんね。約束は守って下さい。神樹王と聖樹王も知らない筈ですが、どこでお聞きになったのでしょう。他にこの事を洩らさないで下さい」


「ありがとうございますっす。この事は誰にも言わないっす。あちきの後継者だけに一子相伝しますっす。そこだけは勘弁して下さいっす。これで取引完了っす。有り難うございましたっす」


やった。手に入れたっす。これで旦那さんとこに戻れるっす。

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