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第四章第九話 鉱脈珠

第四章第九話 鉱脈珠



 騎士団を連れて間引きに出たは良いけどフロッガーの襲撃を受けた。騎士たちが近付くとバビョーンと飛んでとんでもない所に着地する。


 遠くから舌を伸ばして来て絡め取るから始末に悪い。あっちこっちに走り回りながら何とか仕留めようとしているけど、隊列だの隊形だのがもうめちゃくちゃにされて連携も取れない。


 ぬかるんだ地面を必死に走ってフロッガーを追いかけ回す騎士たち。この足場の悪さも手伝って騎士たちが十全に力を発揮出来ていない。


「落ち着け! 各隊に通達。円陣を組み直せ」


 副騎士団長の指示で各小隊長達が部下をまとめて円陣に移行しようとする。その間もバビョーンと飛んであらぬ方向から舌の攻撃が殺到する。


 後退しようとする騎士を絡め取ってまた引き摺り倒す。自力で舌を斬り裂き難を逃れる騎士。しかし立ち上がる前に別の舌が絡み付く。


 また援護にかけ出す別の騎士。いつまで経っても円陣が完成しない。


「ええい。何をやっておるか! たかがフロッガーだぞ」


 まあ、そうなんだけど普通より大きいからね。ああ、どんどん集まってきちゃってる。最初は数匹だったのに十数匹になってきた。まだ増えそうだ。不味いかな。


 このまま見てるだけだと犠牲者が出そうな雰囲気だ。でもここで手を出すと騎士のプライドがズタズタになっちゃうかもしれないしな~。


「副団長。魔法で援護してはいかがですか?」


「はっ。了解いたしました。全騎士団に通達。魔法戦用意。各個に敵性体を撃破せよ」


 前衛としてフロッガーの舌の攻撃を受け止める騎士とその後方に回って呪文を唱える騎士に分かれると後方からファイヤーアローが次々と打ち出される。


 大口を開けて舌を伸ばしていたフロッガーの口の中にファイヤーアローが吸い込まれて行く。この攻撃は効いたみたいだ。次々と口の中を焼かれたフロッガーが苦悶していく。


 ファイヤーアロー一発程度では斃せない様だ。前衛の騎士が今度こそ切り倒して止めを刺して行く。やっと騎士たちの連携が機能し始めた。


「どうやら何とかなりそうですね。それにして魔獣の種類が変わりましたか」


「はっ。お見苦しい姿をお見せしてしまいました。そうですな。どうも雨に強い魔獣が活発に動き出したようです」


 程なくしてフロッガーを撃退できた。その後もマイマイとかマイマイカブリーなどの魔獣に襲われたがこれも撃退に成功している。さらに移動をして周辺の索敵を続ける。


「全員に停止を命じて下さい。集合。円陣を組ませて」


「はっ! 集合せよ。円陣を組め。如何なさいましたか旦那様?」


「う~ん。よく分からない。周囲の景色が変わった様な気がするんだ。注意して見て」


「へへへ。リュディーは分かったよ。木だよ木。動いてる」


「! トレントか!?」


「周囲の木に注意しろ? トレントが紛れてるぞ」


 植物系の魔獣も活性化してるのか。面倒だな~、とか思ってるとそこら中の騎士が吹き飛ばされてる。トレントの枝の一撃を受けたようだ。


 もう周り中が森ではなかった。周囲を蠢く木々に取り囲まれていたのだ。さすがに俺も驚いた。いつの間にか周囲一帯がトレントだらけだった。


「これは参ったね。トレントの巣にでも迷ういこんじゃったかな」


「いや、これは。誘導されたんだな。待ち伏せ地点に向かって道の様に別のトレント達が並んでいたのだろう。その道を通ってここまで来てしまっていたんだ」


「トレントは火が苦手だけどこの雨じゃ着火出来ないよね。なる程雨期に活発になる訳だよ」


「じゃあ、斧型のエンチャントで斬り倒しちゃおうか?」


「「「おー」」」


 さすがにこの状況じゃ看過出来ない。直ぐに奥さん達がエンチャントを発動する。そのまま手近のトレントを一薙ぎにする。騎士たちは右往左往するばかりだ。


「副騎士団長。どうせただの大木です。鎌のエンチャントを覚えていますか? 今度は斧のエンチャントにして切倒しなさい」


「全員傾聴せよ。斧型のエンチャントで周囲のトレントを切り倒せ。奥様方に後れを取るのではないぞ」


 奥さん達は次々とトレントを切り倒して行く。それを見た騎士たちも落ち着きを取り戻し、次々とエンチャントを発動する。パリン。


 鎌よりもっと強度を上げないと壊れちゃうんだなこれがまた。すかさずトレントに薙ぎ払われる騎士たち。それでも果敢に挑戦する。


「・・・姐さん達はいかないの?」


「サラやんを一人にする愚はもう冒さへんよ。トレント程度ならマイヤ達で十分やろ」


 そう言って近づいて来るトレントだけザクザク切り倒す。Sクラス冒険者二人の護衛って贅沢だな。騎士団をまるで信用してないのも凄いけど。


 まあ、今までの行動を見る限り無理もない。奥さん達が参戦してあっという間にトレントの群れを制圧してしまった。


「終わったみたいだね。じゃあ、間引きを続けようか。副騎士団長」


「・・・申し訳ありません」


「な~に、そのうち鍛えてもらうから気にしないで。その内慣れるから」


 こうして周囲の討伐を終えて拠点に戻る。さすがに雨の中なのでびしょびしょになっちゃった。


「全員直ぐに着替えてお風呂に入りなさい。風邪でも引いたら大変だ。装備の手入れはその後で良い。解散」


 おうちに入る前に装備を外していると侍女さん達が手伝ってくれる。濡れた装備一式やらはどこかに持って行っちゃった。


 きっと手入れとか洗濯とかしてくれちゃうんだろう。楽チン楽チン。そのままお風呂に誘導されて体を温める。


 お湯は熱めに入れられている。ナイス! いい仕事してまっせ侍女さん。それにしても騎士団はもう少し訓練しないといけないな~。


 魔獣の種類が変化した途端、これじゃあ先が思いやられる。メル姐さんにだっこされながら湯船につかっている俺。軽く現実逃避しちゃったよ。


「もうさ。人数も増えたしお風呂分けても良いんじゃないかな~?」


「なにゆうてんねん。特に困ってへんやろ? ふかふかやろ? ええやんか」


「まあ、ふかふかだけどって。そう言う問題じゃないでしょ! ちゃんと慎み深く普通に。ね! 普通が一番だよ。普通が」


「・・・うちらの普通はこれやんか。よいしょっと」


 ルル姐さんの上に移動させられたよいしょだ。もうお人形さんだよ。


「あんな~。お子様なんやからそんなん気にしても始まらへんよ」


「俺成人してるんだけど。ちょっと人より早かったけど。それは家庭の事情なんだから置いといて。成人、大人なんだよ?」


「あははは。法的には大人だけど体は子供のままなんだから気にするな」


「ここはいつも元気だけどね。若い若い。ひひひ」


・・・もう良いです。ミヤが参戦しだすと直ぐ握るから反論しない。プイッとそっぽを向いて返事をしない。


「お、反抗的だよ。そう言う年頃かな? 挟んだげようか? きっと天国だよ?」


「いいです。いいです。もう触らないでミヤ。大人しくしてるからや~め~て~」


 ミヤから逃げるふりをしながら脱出を試みる。うん。アンジュに掴まった。


「久しぶりですね、サラ。最近は姐さん達に抱かれてる事が多いから、たまには私の所にも来なさいな」


 くっ。脱出に失敗した。自由に湯船の中で過ごすのはまたの機会になりそうだ。


「それはそうと魔獣の種類に変化が出てきましたね。サラは予想してましたか?」


「ううん。なんか変わるかなとは思ってたけど劇的に変化してたね」


 アンジュに抱っこされながら話を続ける。獣形の魔獣が鳴りをひそめ爬虫類や植物が活性化したようだ。


「でも襲撃自体は少ない様でした。はて、何かありましたか?」


「そうなんだよね。全体的に少ないよね。1週間も放ったらかしにしたのにさ」


 話は単純だった。翌日起きたら侍女さん達がざわざわしてた。なんかざわざわしてるけど朝の支度はちゃんといつも通りお手伝いしてくれた。


 お茶を1杯飲んでからダイニングに移動して聞いてみた。


「どうしたの? なんか落ち着かないね?」


「ええ、その。昨日テーブルに出してあった石ですか。片づけておいたのですが、大きくなったものですから皆でおかしいって」


「ん? 石? ああ、鉱脈珠か。そう言われてみれば忘れてたね。そうそうあれ周囲の魔力を吸って大きくなるんだって。どんくらい大きくなったの見てみたいよ」


 一礼してその場を後にした侍女さんが持って来てくれた。最初小指の先位だったんだけど今ではビー玉くらいになってる。


 周りにまとわりつくキラキラ、魔力の流れも勢いを増してるみたい結構綺麗だよ。


「へ~。1日で結構大きくなったね。キラキラも周囲に広がって綺麗だよ」


 手で触ってみようとしたら。結構厳しく侍女に止められた。


「いけません! 旦那様。直接お触りになると魔力を持って行かれます。昨日も別の侍女が触りまして、今日も魔力枯渇状態で休んでおります」


「あら~。侍女さんは大丈夫? そりゃ危ないね。気を付けるよ。魔力枯渇した侍女さんにはMPポーション上げて。倉庫にあるから飲んでいいよ」


「ありがとうございます。では後ほど頂戴します」


 ぞろぞろとダイニングに入ってきた奥さん達がキラキラと周囲の魔力を吸収する鉱脈珠を見て食いついた。


「おお、僕の言った通りでしょ。大きくなってる。キラキラも広がってるね。へへへ。子供のころに鉱山の奥に設置してあるのを見て以来だよ。あの時は吸ってるんじゃなくて吐き出してたけどキラキラももっと少なかったな」


「綺麗ですね~。魔力が目で見えるなんて凄いですよぉ~。よっぽど濃いんですねぇ~」


「うむ。初めて見るのじゃ。くふふ。これはまた陛下に自慢できそうじゃ」


「・・・これってさ他の鉱山にもってったら高く売れるんだよね? それで枯渇した鉱脈珠を買い取って来てまた補充したらまた高く売れちゃったりしない?」


「うん。うん。する。する。ここなら結構速く充填出来そうだよ。普通は数年間放っておくらしいけどね。どの位で貯まるか分からないけど暫く放っておいてみようね」


 海岸線の間引きをしたり、もう一度土おこしをしたり、防壁の確認作業と、そうそう海岸には製塩小屋も建てた。雨が降っても製塩出来る様にしたんだ。


 建て方をちょっと工夫してまずは屋根から造ったりして塩村にも小屋を建てて風呂や倉庫などを建てた。


 物資も補充して一応生活できる準備が整ったのでエルフチームとその護衛の騎士に侍女さんを一人つけて派遣した。


 製塩と海岸の間引きを担当してもらう。こちらのリーダーはエルフの元副隊長がするみたい。ダークエルフの元副隊長はこっちで薬師部隊を率いてるからそのまま薬師部隊にする。


 これで純粋な騎士団員は4名になっちゃった。塩村との連絡は護衛の騎士が訓練も兼ねたマラソンで往復してる。


 最初は1日以上かかってたけど最近どんどん短くなって来てるよ。もう雨脚は凄く激しくなって来てる。大シュナイダー領でもここまで雨は降って無かったから大森林特有だと思う。


 これで薬と塩が随時出来てる事になる。あとは小麦が再開できれば言うことなしなんだけど、雨期はまだまだ半ばだからもう少し先になりそう。


「だ、旦那様。あれは如何なさるのでしょう?」


「? あれ?」


「はい。石でございます。随分大きくなっているようですが大丈夫でしょうか?」


「ああ、鉱脈珠か。そう言えば忘れてたね。色々やってたから。ずーっと放ったらかしになってたよ」


 そう言って倉庫に仕舞ったままになっていた鉱脈珠を見に行ってみると魔力が渦を巻いて音がしそうなくらいになってた。


「うっそ! これやばくない?」


 その中心にはもう一抱えもありそうなくらいの大きさになってる鉱脈珠が鎮座して明滅を繰り返している。


「ミ、ミヤ~。これ、これ見て! これ大丈夫なの? 爆発しそうに見えるけど」


「!!! し、知らないよ。こんなになってるのは僕だって初めて見たもの。ぶ、不気味に明滅してるのがさらに恐怖を誘うね。カウントダウンじゃないよね? 分からないときは一応止めようよ。マジックバッグに収納しとこう」


 魔力の渦をかき分けながら、鉱脈珠に近づいてマジックバッグに収納する。ああ、怖かった。近づいた途端に爆発とかしたらどうしようかと思っちゃった。


 おうちに戻って皆に報告するとみたいと言うからちょっと出してみた。また凄い勢いで魔力が吸収され始めたので慌てて収納する。


「これは、どこまで吸収させていいのか分かりませんね。詳しい方に尋ねるのがいいのではないでしょうか。ミヤのおじいさんとか詳しくないのですか?」


「え~。じいちゃんとこ行くの~。また説教とか始まりそうだから嫌なんだよ。でもまあ、しょうがないか。これの方がもっとおっかなそうだもんね。絶対爆発するよこれ」


「えへへ。サ~ラ~。ドライアドさんが数期分くらいの魔力を消費してくれてありがとうって言ってる。ちょっと楽になったみたいだよ。また周囲から魔力が戻ってきちゃうから続けて消費してほしいってさ」


「な、なに。ドライアドさん? ああ、最初のころ言ってたやつか。栄養過多だからとか言ってたやつかな? 魔力の消費でも良いんだ」


「うん。魔力が減れば魔獣の発生も抑制されるからこの調子で頑張ってとか言ってる。数百年分くらいは土に溶けちゃってるから養分で吸い上げてって。ここ百数十年分はもう溶け込まないから魔力で周囲に放出するしかなかったんだって。それがちょっと減った見たい」


「・・・そんなにあるんだ。まあ、そっちは追々やってくとして。この鉱脈珠をどうするか決めないと」


「決めるも何もどうしたらいいかの情報を集めねば対処のしようがあるまい」


 こうしてドワーフ村行きが決定した。

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