第四章第八話 メタルキングスライムをやっつけろ
第四章第八話 メタルキングスライムをやっつけろ
ルル姐さんはメタルキングスライムに急接近すると同時にその勢いのまま攻撃を叩きこむ。ギャインみたいな金属を金属で叩く音がしたかと思ったら別の場所からギャインと鳴り響く。
高速機動まで速度を上げていないけど敵の攻撃を集中させない様に動きながらの攻撃だ。でもこれって自分の攻撃も命中させるのが難しくなると思う。それでも100%で当ててる。
今まで見てるだけだった鬱憤を晴らしてるみたい。そうこうしてる内にやっと落ち着いて来たグリンダが物理障壁などを貼り直してくれる。最後に攻勢障壁を貼って一応ねなんて言ってきた。
これで不意打ちも防げる。ルル姐さんがメタルキングスライムの周りを縦横無尽に飛び跳ねながら攻撃するのを見て他の高速機動持ちもマネしだした。
メタルキングスライムが狙いが定まらなくなったためかゴロンと転がっての攻撃に移行しだす。
「ん? なんか転がった時のお腹の方って言うのかな? お尻の方って言うのかな? なんか色が薄くないかな。グリンダどう思う?」
「そうですねぇ~。確かに薄いですし、もぞもぞ動かしてます。多分顫動しながら動くので柔らかくなければいけないのかもしれませんわぁ~。でも攻撃出来るかとなると難しいでしょう~」
そうだね。あのゴロンとなる動きを回避しながら隠れていた部分を攻撃するのは難しいだろうと思う。
回避がやっとのメンバーはもちろん周囲を飛び回ってる連中だって追いかけて行って攻撃した瞬間に一緒くたに潰されちゃうだろうからね。
弱点らしいものは見つけられたけど攻撃し難い。攻撃できたとしても結局核を見つけて破壊しない限り斃せない。
こちらは既に疲労が激しく継戦能力が著しく低下している。どうすれば助けになるかなー。あの硬いツルツルのビー玉野郎を・・・ん? ビー玉? 前世の記憶・・・か?
ビー玉はツルツルのガラスの玉で硬いな。子供のころになんか悪戯してたな。あれなら行けるかもしれない。けど、どうやってやろうかな? ふと上を見上げれば鍾乳石がぶら下がってる。
・・・あれなら使えるか? 一番大きな鍾乳石に狙いを定めて根元付近にポイント弾を打ち込む。落ちてきた鍾乳石を風魔法で受け止めて上空を旋回させるように回しながら加速していく。
ぐぐぐ。重い。これは落としちゃいそう。
「グ、グリンダ助けて。落としちゃいそう。あれをぶつけるからあいつが転がるまで支えて勢いをつけたい」
「! まあぁ~。大きいですよぉ~。むふぅ~。これは・・・キツイですわぁ~。私は支えるだけにしますからぁ~、コントロールはサラがやって下さいねぇ~」
「分かったよ。次にあいつが転がったらぶつけるからそのつもりでいてね」
重い鍾乳石を上空で旋回させながら、その時を待つ。1回目はタイミングが合わずに見送る。2回目、向きが悪くて狙いが付けられなかった。
3回目、行こうと思ったけど転がるのが早過ぎる。転がってからじゃ間に合わない。もっと前兆を見極めていかないととても狙えそうにない。
ん~。あ、一応転がる前に勢いをつけてるな。ぶるぶるっとした感じがあるのか。よし、じゃあ、もうあのタイミングで行ってみよう。1、2、の3! ギュインてな感じで鍾乳石が飛ぶ。
早く転がれ! ああ、早過ぎたか。と思ったらゴロンとなったので狙いを微調整していっけ~。ドスッ。刺さった!!
よし、鍾乳石が邪魔になって元に戻れなくなってる。今だ鍾乳石を火魔法で加熱。
「みんな鍾乳石を加熱して。アイツを直接温められないから鍾乳石を介して熱くしたいんだ」
「な、何をする気だ。ええい。聞いた通りだ火魔法を打ち込め。鍾乳石を壊すんじゃないぞ。特にティアちゃんと制御しろよ」
「うぅぅ~。分かっておるのじゃ。いちいち人の弱点を指摘しなくとも・・・ぶつぶつ」
昼間の事を指摘されて不貞腐れながらも魔法を改良した。
「それならこんな魔法はどうじゃろう? 『煌めく炎よ、細く長く絡みつけ。炎蛇』」
炎の帯が長く伸びていき鍾乳石に絡み付く。これなら出力を気にせず行けるからティア向きだ。
「おお、それいいね。『炎蛇』」
次々とみんなが『炎蛇』をマネ、鍾乳石に絡め付かせる。奴の体から煙が立ち上り熱くなってきているのが分かる。そろそろいいかな。
「『炎蛇』中止~。今度は水球を一斉に打ち込むから氷魔法で出来るだけ冷やした水にして。凍らせちゃダメだからね。みんな作った? いくよ。一斉のせ」
全周から放たれる水球を受けて、もうもうと水蒸気が上がる。立て続けに水球を打ち込んで急激にメタルキングスライムを冷やしてやる。
風魔法を使って水蒸気を打ち払った。既に鍾乳石はボロボロに砕け散ったのかメタルスライムはもがいていた状態から元の姿勢に戻っていた。全身に細かなひびが入り、それでも健在だ。
「今だよ。罅だらけになった。今なら壊せるかも。やっちゃって」
最初に突っ込んだのはミヤ。石附を真っすぐメタルキングスライムに向け爆炎を伴った突きを突き込む。細かな罅に引っかかるのか攻撃がもろに入る。
バゴンと爆発を伴ってメタルキングスライムが砕ける。続いてヤルルが大ぶりの一撃をミヤの後ろから同じ個所に今度を水球ごと叩き込む。ドゥゴン。砕けた箇所なのでもう滑らない。
直接その威力がそのまま破壊力に代わる。さらに砕け散る。メタルキングスライムが反撃しようとしてかランスを出そうとするけど、出す傍から砕ける。
無理な形状変化に耐えられずに砕けているようだ。そこからは一方的に攻撃が炸裂しだした。おまんじゅうの様な形だったメタルキングスライムがでこぼこの歪な形に変わって行く。
細かな罅は内部まで浸透していたらしく次々と砕けていく。取り込んだ鉱石があだとなって体を軟化させる事が難しい。メタルキングスライムは次々と攻撃を喰らって行く。
さっきから物凄い音が鳴り響いてる。攻撃がヒットする度にバガンだのドゴンだのと立て続けに鳴り響く。
俺とグリンダは思わず両手で耳を塞ぎながら観戦した。よく見ると全員全身傷だらけになってる。
「ねえ。グリンダ。回復かけてあげた方がいいんじゃないかな」
「えぇ~。なんですかぁ~。よく聞こえませんのぉ~」
「回復。回復だよ! みんな砕けたメタルキングスライムの破片で傷だらけだよ」
「あぁ~。そうですわねぇ~。あんまりの事で思わず見入っちゃってましたわぁ~」
全体に回復魔法が掛けられ見る見るうちに傷が癒されて行く。いつ見ても凄いな。これで初級のヒールを効果範囲を広げただけだって言うんだから。聖女様の名前も伊達じゃない。
「よーし。攻撃止め~。サラこっちおいで。もうこいつに抵抗する力はないよ。だから大丈夫」
「なになに? 斃せたの?」
俺が皆に近づいて行くとメタルキングスライムはまだ健在だった。なかなかしぶとい。
「ほら。やっと核が露出したんだ。これに攻撃してみろ。今日の殊勲賞だ。とどめはサラに刺させてあげる」
全員が肩で息をしながら武器を杖代わりにして見守っている。メタルキングスライムはもう身動きもしてない。
よーし。なら頂くとしましょうか。渾身の上段からの唐竹割りで核を攻撃する。こうしてメタルキングスライム討伐に成功した。
「ふぃ~。やっと終わったよ。さすがの僕もかなり疲れた。ん? あ~~~~~」
疲労困憊のみんなが討伐が終了したと同時に座り込んでる中、ミヤが大声を上げる。這いつくばりながら、今討伐したメタルキングスライムに近づいて何かを拾い上げた。それは小指の先ほどの大きさで鈍色に光る綺麗な球だった。
「みて見て。これ。鉱脈珠。みんな知ってる? 鉱山とかに置いておく奴なんだけど」
「知らんな。なんなんだそれは?」
「めったに手に入らないんだけど、メタルキングスライムのレアドロップ品だったんだ。これね周りの魔力を吸って大きくなるんだけど。ある程度魔力を吸わせてから鉱山なんかに配置すると鉱脈が尽きないんだって。だんだん魔力を放出してまた小さくなっちゃうからまた魔力を吸わせるんだ」
「へぇ~。鉱山関係者は喉から手が出るほど欲しがりそうだね」
「うん。大抵の鉱山は持ってるんだけど魔力枯れしちゃったりするからいくつでも欲しいみたい。普通は魔力を吸わせるのも時間が掛るからね。魔力溜りとかだと随分早く溜るって聞いたことあるよ。でも魔力溜りは危ないからね。なかなか大変みたい」
「へへ。じゃあ儲かっちゃったのかどうかは微妙だね。でもレアドロップなんだから儲かったでいいよね?」
「うん。はい、仕舞っておいてね」
レアドロップも入手できたしクエストも完了したので今回の冒険は成功かな。暫く休んでから重い腰を上げて洞窟を後にした。
下山すると村人達が心配していた。1日経っても帰ってこないから全滅したのかと思われていたみたい。俺達は天幕を仕舞って早々に村を後にした。
その日も遅くになってやっと迷宮都市に帰りついた。馬車を返却して終了報告は明日にすることにして、その日はお風呂で疲れを癒して休んだよ。
翌日ギルドに顔を出してクエスト完了の報告をした。達成報酬を貰って、やっとクエストは終了した。支払いを済ませて転移で大森林に戻ってきた。
辺りは雨がしとしとと降り、濡れそぼった木々からは緑の匂いが充満していた。
「ただいま~。やっと完了したよ。こっちはどう?」
「お帰りなさいませ。旦那様。こちらは特には何も起きておりません。雨ばかりで憂鬱でしたが間引きも控えておりましたし収穫もありませんので」
「そっか~。何事もなくてよかったよ」
俺達が装備品を外してダイニングで一息つくと、直ぐにお茶が運ばれてきた。あったかい紅茶を飲みながらパタパタと鳴る雨音を聞いていた。
ふと思い出してマジックバッグから鉱脈珠を出してみる。出した途端に鉱脈珠の周りに魔力の渦が発生してどんどん魔力を吸い始めた。
「へぇ~。見て見て。鉱脈珠が凄い勢いで魔力を吸いだしたよ。ははは。大森林が魔力溜りそのものみたいなもんだからどんどん吸うのかな」
「おお~。僕も初めて見たよ。キラキラした魔力を吸い込むのは綺麗だね。明日までほっとけばそこそこ吸い取るかもね」
そんな話をしてコロンとテーブルの上に鉱脈珠を置いておく。今日はゆっくりと休んでから明日にはまた間引きを少ししないといけないな。雨期は魔獣の活動も収まってるのか静かなもんだ。
翌日には雨がザーザー降っていた。昨日より強い。雨の中、間引きはつらいけど1週間も放ったらかしにしてたからな~。森の様子も見ないといけないし仕方なし。
行くか。装備を整えてマントを羽織って出発する。俺達の周りをさらに騎士団達が取り囲むようにして大部隊での出発になっちゃった。
出発前に副騎士団長が絶対ダメだと言いはる。護衛は自分達の仕事だからと言ってついて来る事になっちゃった。
「第二小隊前方の索敵を開始せよ。第三第四は両脇を固めて奇襲に備えよ。第五は後方を固めよ。第一小隊集合。これよりご領主さま方の警護を始める」
・・・。あれ~。間引きに行くんだよ? 視察に行くみたいになってるじゃん。これじゃあ、戦闘出来ないんじゃないかな。
そんな事を副騎士団長に言うと戦闘は自分達にお任せ下さいって。まあ、どうなるか分かんないけど初の試みだ行ってみようか。
圏外を出て休耕地を一巡りしてみる。特には変わった事はないみたい。と言うか魔獣が全然いない。おかしいな。これが変わった事なんだけど。
さらにもう1周、今度はさらに遠くまで行ってみるとやっといた。なんだあの緑の奴。ビヨーンと凄い高さまで飛んだ。呆気に取られていると襲いかかってきた。
「第二小隊戦闘準備。第二第三は押し上げよ敵を殲滅する」
「報告します。敵性体を確認。蛙の様であります。恐らくフロッガーと思われます。通常よりやや大きめのため注意されたし。以上」
「うむ。フロッガーなら舌の攻撃に注意せよ。巻き着かれたらそのまま丸のみにされるぞ」
第二小隊が数体のフロッガーに仕掛ける。ビヨーン。前方の小隊を飛び越え俺達の前まで飛んで来ちゃった。
「第一小隊抜刀! フロッガーを近づけるな。第二第三第四は直ぐに戻れ。第五小隊は皆さんを連れ後方に下がれ」
あ、舌に巻きつかれた騎士が凄い勢いで引き摺られて行く。不味い飲み込まれる。騎士が巻きつかれた舌を切り捨て何とか難を逃れたのも束の間、他のフロッガーの舌が腕を絡め取る。
救援に入った他の騎士がすかさず斬り飛ばすも次々に舌が飛んで来る。




